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「織田信長の傳役、平手政秀が自害したのは、主人の奇行を諌める為。」という通説は本当か?「伊吹山に、日本原産では無い薬草が在るらしい。」という話から閃いた、在り得べき戦国秘話とは?秀頼の本当の父親は誰なのか?島原の乱の真の首謀者は?
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加藤廣氏の「信長の血脈」は、織田信長と縁の深い人物を主役に据えた4つの短編小説から成り立っている。織田信長と縁の深い人物とは「信長の傳役・平手政秀。」、「信長の異母弟という説も在る清玉上人。」、「信長とは縁戚関係に在る名古屋(那古野)山三郎。」、そして「母が明智光秀の娘と言われる三宅重利。」だ。
デビュー作「信長の棺」では様々な資料を基に、「本能寺の変の黒幕は豊臣秀吉だった。」という説を記した加藤氏。今回の「信長の血脈」でも、通説とは異なる“独自の説”を記している。
「幼少時から続く奇行が収まらない信長を諌める為、切腹して果てた。」というのが、平手政秀の最期に関する通説。しかし、「政秀の自裁は、信長が20歳の時。今更、素行不良を諌める年齢でも無いし、信長が空け者で無いのは政秀も判っていた筈。で在るならば、彼の自裁には別の意味合いが在ったのではないか?」という考えから著されたのが「平手政秀の証」で、此の内容には「成る程。」と思わされる物が在った。
でも、残りの3作品に関しては、異説を補強するに充分な根拠に乏しく、特に「山三郎の死」という作品は、そんな感じが強い。「様々な証拠を基に、大胆な説を繰り広げる。」というのが加藤作品の大きな魅力なので、そういう意味では正直ガッカリな内容。
総合評価は、星3つとする。