ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「くちぶえ番長」

2024年11月11日 | 書籍関連

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口笛を吹くと、涙が止まる。大好きな番長は、そう教えてくれたんだ。

小学4年生のツヨシのクラスに、一輪車と口笛の上手な女の子、マコトが遣って来た。転校早々、「私、此の学校の番長に成る! 」と宣言したマコトに、皆は吃驚。でも、小さい頃に御父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友達思いで、頼りに成る奴だったんだ。

最高の相棒に成ったマコトとツヨシが駆け抜けた1年間の、決して忘れられない友情物語。
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小説くちぶえ番長」(著者重松清氏)は、小学校4年生のツヨシとマコトが主人公。実はツヨシの父親とマコトの父親は、小学校時代の大親友。でも、「マコトの父親は大分前に亡くなり、ツヨシの父親は今も彼の死を悲しんでいる。だが、マコトの存在は知っているが、性別を含めて殆ど知らない。」という設定。父親同士が大親友だったという2人が、マコトの転校という形で出会う。髪の毛を丁髷の様に結い男勝りのマコトを、クラスメート奇異な目で見ていたが、彼女の強さや優しさ、友達思いな姿に、段々打ち解けて行く。其れはツヨシも例外では無く、恋心めいた物を持つ様にも。然し、1年が経ち、マコトは転校する事に・・・というストーリー。

1963年生まれの重松清氏は今年で61歳と、自分と世代。彼の作品は自身の幼少期を重ね合わせた様な時代設定の物が多く、読んでいて"何とも言えない懐かしさ"を感じる。単に「懐かしい!」と感じるだけで無く、「友達と缶蹴りで遊んでいた際の"空き缶を蹴る感触"。」だったり、「夕方、屋台を引いて豆腐を売りに来た豆腐屋の『ピープー♪』という喇叭の音。」だったり、「風呂を焚く際の"オガライト"の燃える匂い。」だったりと、"子供の頃に経験した五感への刺激"もが在り在り蘇って来る様な筆力が、彼には在る。

自分が子供だった頃、マコトの様な女の子が周りにた訳では無い。でも、マコトを含めたクラスメートの姿に、自身の小学生時代が重なってしまうのは不思議だ。自分と同世代以上の人だったら、同じ様な感覚を持つのではなかろうか。

19年前、今は無き小学館の学年別学習雑誌小学四年生」に連載された作品が元に成っている。だから、子供でも読み易い文章だし、プロローグエピローグの文章は、実際に其の位の年頃の子に対して話し掛ける様な文章中年と成ったツヨシが、転校して以降全く連絡が取れなくなり、今はどうしているのか全く判らない状態のマコトを思う内容で、読んでいてグッと来る物が在った。

映画スタンド・バイ・ミー」もそうだが、老いた主人公が自身の切ない幼少期の思い出を振り返る作品が、自分は堪らなく好き。(自伝的な作品では無いと思うけれど)若し自伝的な内容だった場合、「作家に成ったツヨシ(→重松氏)が、自分の事を未だにハッキリと覚えてくれている事。」をマコトが知ったら、凄く嬉しいだろうなと思う。そんな気持ちにさせる作品だった。

総合評価は、星4つとする。


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