知人から聞いた話だ。知人の知人に、Aさんという女性が居る。年齢は90歳近くで、団地で一人暮らしをしていた。月に2回、趣味のサークルで顔を合わせ、良く話をしたり。見た目は若く、頭も確りした女性で、サークルが終わった後、バスを利用せずに、徒歩で家に帰る事も在ったとか。
Aさんには矢張り高齢の姉妹が居り、非常に仲が良かったのだが、一昨年及び去年に次々と亡くなった。姉妹が全て鬼籍に入ってしまった事で、彼女は落ち込んだ様子を見せていたと言う。でも、サークル活動には、休まずに参加していた。
然し、そんなAさんが唐突に、サークル活動に来なくなる。心配した知人がAさんに電話した所、「風邪を引き、体調を崩している。」と本人が答えたので、「見舞いに行こうか?」と聞いた所、「そんな大事では無いので、大丈夫。」と断ったそうだ。其れでも気になった知人は、離れて暮らすAさんの子供の電話番号を以前聞いていた事も在って、「御母さんが体調を崩しているみたいなので、見舞いに行って上げて。」と伝えた。
以降、Aさんがサークルに来ない状態が続く。心配になって何度か電話するも、呼び出し音が鳴るだけ。最後に話をしてから約3ヶ月後、Aさんを訪ねる事に。
3ヶ月振りに会ったAさんは言葉数が少なく、目の焦点も合っていない感じが。会話が噛み合わず、挙句には唐突に“暴力的な行為”を見せた事で、「此れはおかしい。」と思ったそうだ。直ちに地域の民生委員に状況を説明し、Aさん宅を訪ねて貰った所、「認知症の可能性が高い。」と判断。Aさんの子供に其の旨を伝え、病院で診察させた所、重度の認知症で在ると診断された。
住んでいた団地を引き払い、専門施設に入ったAさん。「もう、其処から出る事は無いだろう。」との事。「物凄く確りしていて、矍鑠とした感じの人だったのよ。最後に電話した時も、別におかしな感じはしなかった。其れなのに、僅か約3ヶ月であんなにも深刻な状態になってしまうなんて・・・ショックだわ。」と知人は落ち込んでいた。