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資産家の娘・小幡早百合(おばた さゆり)に、意中の相手が居るのか?調査を依頼された探偵の木暮征一(こぐれ せいいち)と菜々(なな)は、最後の候補者・池宮孝輔(いけみや こうすけ)と早百合がスクランブル交差点で擦れ違う様に仕向ける。だが、其の寸前に、何故か木暮は早百合に電話を入れた。 「意中の交差点」
借金苦から、休暇を利用して質屋に押し入った刑事の角垣(かどがき)。逃走中に電柱に衝突するも、目撃者は無く、無事逃げ果せた。だが、何故か上司の南谷(みなみたに)は、角垣が犯人だと見抜くのだった。 「ある冬のジョーク」
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長岡弘樹氏の「道具箱はささやく」は、“声”や“ジョーク”等、其の職業の“商売道具”を題材にした18の短編小説で構成されている。
「相変わらず伏線の張り方が上手いなあ。」と感じる。「仮面の視線」なんぞは、最後の一文で「そうだったのか・・・。」という衝撃を受けた。
其の一方、「無理を感じる設定。」や「先の展開が読めてしまう。」というのも散見された。
前者で言えば「ある冬のジョーク」が其の典型で、「南谷が角垣を、犯人と見破った理由。」も然る事乍ら、「南谷が、『犯人かもしれない。』と角垣に目を付けた理由。」が記されていないので、非常に無理を感じる展開だ。又、後者で言えば「声探偵」がそうで、早い段階で“落ち”が読めてしまった。
他の長岡作品と比べると、全体的に物足りなさを感じる。総合評価は星3つ。