ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「モンスター」

2013年06月16日 | 書籍関連

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田舎町で瀟洒なレストラン「オンディーヌ」を開店した鈴原美帆(すずはら みほ)は、一躍にして人々の注目を集める事に。其れは、彼女が絶世の美女だからだ。男のみならず女性もが、美帆の美しさに圧倒されたのだった。

 

しかし、そんな彼女には秘められた事実が存在。嘗て彼女は、其の町に田淵和子(たぶち かずこ)という名前で生活していたのだが、其の時には今とは全く別の顔、誰もが目を背けたくなる様な、畸形的な迄に醜悪な顔をしていたのだ。周囲から化け物扱いされ、悲惨な日々を送っていた彼女は、思い悩んだ末に或る事件を起こし、町を追われる事に。

 

名前を「鈴原美帆」と変え、東京で暮らす事になった美帆。田舎以上に「美しさ」が評価される都会でも、彼女は辛い日々を送っていたが、整形手術に目覚め、莫大な金額を掛けて美人へと変わって行く。そして完璧な美人へと変身を遂げた時、彼女の心の中に甦って来たのは、1人の男性への狂おしい迄の情念だった。

 

美帆は、生まれ故郷に帰る事を決意。彼女が嘗て起こした事件は、未だに伝説として語り継がれており、「田淵和子」はモンスター」と呼ばれている。そんな町に新しい名前と顔で帰った彼女は、一体何を目論んでいるのか?

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ベスト・セラー作家の仲間入りを果たした百田尚樹氏が、3年前に上梓した小説「モンスター」。タイトルだけでは中身が全く想像出来なかったのだが、冒頭に記した梗概如く、生まれ乍らの顔の醜悪さから手酷い差別に苦しまされてきた1人の女性が、「整形手術」という手段で美人に生まれ変わる事で、“表面的な美しさ”に、人は如何に大きく左右されるか。を再認識させられて行くというストーリー。

 

実際問題、“表面的な美しさ”に左右させられる人は多いと思う。「人は見た目じゃない。心が大事なんだ。」とは言うが、表面的な美しさに左右される人が少なく無いからこそ、そういう事が言われるという現実が在るのではないか?偉そうな事を書いているが、自分も“表面的な美しさ”に左右されない訳では無いし。

 

小学校の低学年の頃、クラスに物凄くブスな女の子がた。申し訳無いけれど、顔全体もそうだが、目や鼻といったパーツ其れ其れ酷く、同級生の中には面と向かって「ブス!」とからかっている者も居た。自分も一度だけだが、彼女に対して「ブス!」と言った事が在ったのだけれど、其の時の彼女の哀しそうな表情は、今でも忘れられない。子供の頃とはいえ、「何て酷い事を言ってしまったのだろうか・・・。」という思いは、此の年になっても消えないし、言われた側も決して忘れてはいないだろう。

 

此の作品を書く上で、百田氏は「整形手術」に関して、相当調べ込んだに違いない。「実際に整形手術を受けた人」に話を聞いたりもしたのではないかと思う程、其の記述はリアルだから。

 

「美の追求」に賭ける美帆の熱意は、常軌を逸している感が在る。彼女に対して好意的な姿勢を見せる男からも、御前何処キレてるぜ。と言われてしまう程に。其れでも美帆は、美しく変わる事に熱意を注ぎ続ける。顔を変えるだけに飽き足らず軈ては「女性器」を美しくする手術を行い、そして「話し方教室」に通う事で「言葉」も美しく変えて行く。悍ましい過去を振り切るとはいえ、「其処遣るかあ・・・。」という思いが。

 

完璧な姿を得て、1人の男性への狂おしい迄の情念を晴らそうとした彼女。其の最後は余りに哀しいけれど、「小説では、『恋愛』という物に拘っている。」とテレヴィ番組で語っていた百田氏だけに、単純な哀しさだけには終わっていない。

 

総合評価は、星3.5個


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