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「我々は、何時、何処からでも爆破出来る。」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。ゲレンデの下に爆弾を埋めたと言うのだ。
警察に通報出来ない状況を嘲笑うかの様に繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。全ての鍵は、1年前に血に染まった禁断のゲレンデに在り。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。
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東野圭吾氏の作品「白銀ジャック」は、昨年10月に文庫として刊行された。「実業之日本社文庫」創刊記念という景気付けも当然在ろうが、東野氏の様な人気作家の作品が単行本化を踏まずに、いきなり文庫化されるというのには、「其れだけ“活字本”が売れなくなっているのかなあ。」と寂しい思いが。
学生時代にはスキーを頻繁に行い、44歳にしてスノーボードにも目覚めたという東野氏。だからスキー場を舞台にした「白銀ジャック」は、彼にとって自家薬籠中の物と言える。スキーもスノーボードもしない自分には、描写の一つ一つに目新しさが在った。
犯人と動機に関しては、ほぼ100%当ててしまった。「そんな馬鹿な事が在り得るか!」と思う様な出来事が、現実として普通に起こってしまう昨今だけに、「非現実的な動機」と思える事も想像出来てしまうのが怖くも在る。
疑問に思えたのは“犯人の1人”が捕まった際、苦笑の表情を見せたという点。或る出来事により良心の呵責に苛まされていたにしては、一瞬とはいえ苦笑の表情を見せるというのは妙な気がしたから。後に「滂沱するシーン」が在っただけに、余計に違和感を覚える。
総合評価は星3つ。