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・コロナ禍の最中、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れる事の哀しみ。(「真夜中のアボカド」)。
・学校で虐めを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活。(「真珠星スピカ」)
・父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺無さ。(「星の随に」)
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人の心の揺らぎが輝きを放つ5つの短編小説が収録された「夜に星を放つ」(著者:窪美澄さん)は、第167回(2022年上半期)直木賞を受賞した作品。
5つの作品全て、ハッピーエンドという形で終わっているとは言い難い。(最後の「星の随に」という作品は、少しだけ希望を持てる終わり方だが。)
「高校生の少年が、年上の女性に恋をする姿を描いた『個人教授』。」は、印象深い青春ラブロマンス映画の1つだが、「夜に星を放つ」に収録されている「銀紙色のアンタレス」を読んでいて、「『個人教授』を思い起こさせる作品だなあ。」と感じた。「少年と年上女性との淡い恋。」や「年上女性との切ない別れ。」という共通点が、そんな思いにさせたのだろう。
又、「真珠星スピカ」という作品には、山田太一氏の小説「異人たちとの夏」と似たテーストを感じた。「今は亡き人が、目の前に“生きているが如く”に現れる。」という部分がそう感じさせたのだが、勿論、ストーリーは全然異なる。
個人的には、「湿りの海」と「星の随に」という作品が強く印象に残った。何とも言えない切なさが、心に溜まった澱の如く残る作品だ。
総合評価は、星4つとする。