AERA(4月25日号)に、「消える駅のシンボル」という記事が載っていた。
JR中央本線の大月駅(山梨県大月市)では、改札を抜けた先に在る列車案内板が2つ設けられているのだが、其の間には嘗てアナログ時計が設置されていたと言う。其の時計が、何時の間にか無くなっていた。大月市役所の総務部長によると、今年1月、市民から「駅の時計が無くなっている。」と連絡を受け、調べてみた所、「市内に6ヶ所在るJRの駅全てで、時計が撤去されていた。」事を確認。「時計が無くて不便を感じる。」等の苦情が市民から数件届いている事から、直ぐに大月駅に対し「時計を戻して欲しい。」と口頭で要望するも、回答は無かったそうだ。
大月市議会も2月25日、「時計を撤去し、サーヴィスを低下させた。」と遺憾の意を表明し、時計の再設置を求める決議を賛成多数で可決。同市の小林信保市長等は3月30日、東京都のJR東日本八王子本社を訪れ、時計の再設置を求める要望書を提出した。
JR東日本広報部は駅から時計が撤去された理由に付いて、「スマホ等の普及により、多くの御客様が御自身で時間を確認する手段を御持ちで在る事、保守メンテナンスの負担軽減等を総合的に勘案して、“一部の駅構内”の時計の設置を見直す事にしました。」と説明。
「具体的に、何の駅の時計を撤去するか?」は、乗車人員や時計自体の老朽度合い、保守メンテナンス軽減等を総合的に判断して決めるそうで、JR東日本管内の略全県で実施。1,626駅の内、約30%の約500駅が当該。昨年11月から開始し、此れ迄に22駅(山梨県:20駅、神奈川県:2駅。1月26日時点。)で行われ、今後10年近く掛けて、残りを取り外して行く計画。
駅の時計は、簡易な電波時計とは異なり、自動で時刻を修正する高精度な時計。なので、時計設備の維持管理や更新費用で年間4億円程度が掛かり、撤去する事で年間約3億円の経費削減に繋がるとか。撤去した時計、一部状態が良い物に付いては必要なメンテナンスを行った上で、販売も検討している。
確かに自分も時間確認はスマホ画面で行うし、駅構内から時計が無くなったとしても「絶対に困る。」という訳では無い。又、JR東日本が経費削減に励むのも判らないでも無い。でも、「駅構内は公共の場で在り、全ての人がスマホや時計等を持っている訳では無い事を考えると、時計を完全撤去してしまうというのはどうかな?」という思いも在る。
「大企業のJR東日本なのだから、こんなみみっちい事をしなくても良いのに。」という声も在りそうだが、「コロナ禍で、多くの鉄道会社の旅客収入は激減している。」という現実が在る。JR東日本の場合も例外では無く、昨年3月期の最終的な儲けを示す純損益は5,779億円の赤字で、1987年の国鉄民営化後では初の最終赤字となった。更に、今年3月期の純損益も1,600億円の赤字が見込まれていると言う。そういう状況を考え合わせると、「みみっちい。」と言われ様が、「駅構内から時計を撤去する。」という経費削減策が講じられるのも、止むを得ないのかも知れない。