ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「影踏み鬼」

2010年06月04日 | 書籍関連
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「影踏み鬼」: 17歳で高名狂言作者に弟子入りした人物が、その師匠から聞かされた奇妙な事件を語る過程で、意外な事実を明らかにして行く。

藁屋の怪」: 生れ付き闇しか見た事が無いという盲目の芸人・ヨシが、曰く付きの家に住まわせて貰った際に体験した不思議な話。

虫唾」: 人目を引く器量を有する加代が、力持ちという取り得しかなく、人から散々蔑まれて来た男・政吉と所帯を持ち、彼を生涯思い続ける様になった意外な訳とは?

血みどろの絵」: 数えで8歳の年に、落語家だった父・三笑亭左内を義母・島子達に毒殺されてしまったお雪。それから10年の時が過ぎ、当時下女として働き、「ねえや」と慕っていたタツ子の死を知る。タツ子は何故、幸せになる道を悉く拒み、敢えて自ら不幸せな道を選んで行ったのか?

奈落闇恋道行」: 当代随一の名脇役称された、歌舞伎役者の坂東彦助。完璧な芝居を見せる彼が、或る日の舞台で信じられない失態を見せる。その翌日、自ら命を絶った彦助だったが・・・。
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祖国なき忠誠」及び「誘拐児」と、その著作のレベルが非常に高かった翔田寛氏。「彼の著作を遡って読まないといけないな。」と思って3冊目に選んだのは、彼の処女作影踏み鬼」。幕末から明治初期に掛けての5つの話が、語り調で紹介されて行く「時代小説ミステリー」だ。

自分が子供の頃、変形鬼ごっことして良く遊んでいた「影踏み」。それだけに懐かしさを覚えるタイトルだが、この「影踏み鬼」で翔田氏は第22回(2000年)小説推理新人賞を受賞している。又、受賞後第一作として著した「奈落闇恋道行」は、第54回(2001年)日本推理作家協会賞の短編部門候補作に。文壇に登場した頃から、並外れの才能を見せ付けていた訳だ。

時代小説だけに判り辛い用語や言い回しが結構使われているし、作品によっては登場人物達の関係性がやや混乱してしまう所も在ったが、「表面的に事実と思われていた事柄」の裏に隠された「意外な真実」が語り手を通して徐々に明らかにされて行く手法は、翔田氏が凡庸な新人作家では無かった事を認識させる。人間のの深さというのも痛感させられ、ふっと我が身を振り返ってみたりも。

「祖国なき忠誠」及び「誘拐児」の出来には残念乍ら及ばないけれど、面白い作品では在った。総合評価は星3つ

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1 コメント

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さかのぼって読む (おりがみ)
2010-06-04 10:31:12
おりがみはつい最近ひょいと読んだミステリーが面白かったので「よし、この人の作品をさかのぼって読んでみよう。これから出る作品もチェックしよう♪」と思っていたら既にその作者が急逝していたというちょっと悲しい体験をしました。

本の海の中で出会った一冊・・。大事にしたいですね。
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