ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「パラダイス・ロスト」

2012年06月12日 | 書籍関連

先月下旬、と或る書店で「面白そうな本がないかなあ。」と捜していた所、大声での会話が耳に飛び込んで来た。「五月蠅いなあ。」と思いつつ、30代前半と思われるスーツ姿の2人の男性の会話に耳が行ってしまった。

 

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A: 「Bさんは、結構本読まれるんですか?」

B: 「小説を結構読むよ。」

A: 「俺は、自伝しか読まないんですよ。此の前、スティーブ・ジョブズの自伝を読みましたし。」

A: 「スティーブ・ジョブズの自伝は俺も読んだけど、自伝しか読まないっていうのも凄いなあ。(1冊の本を手に取り)あっ、在った!」

B: 「其の本、面白いんですか?」

A: 「此れはシリーズ物で、第1弾はテレビ番組の書評コーナーで『面白い。』と紹介されていて読んだんだけど、本当に面白くてさあ。で、第2弾も読んで、先達ての書評コーナーで第3弾が発売されている事を知り、今日買いに来たって訳。」

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「自伝しか読まない。」というA氏の言葉は強く印象に残ったが、其れ扨措き、B氏が手に取った本のタイトルは「パラダイス・ロスト」。柳広司氏が著すD機関シリーズ」の第3弾で、自分も第1弾「ジョーカー・ゲーム」及び第2弾「ダブル・ジョーカー」を読了している。昭和10~20年代を舞台とし、大日本帝国陸軍内に設立された謎多きスパイ養成学校「D機関」のスパイ達の活躍を描くシリーズだ。

 

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大日本帝国陸軍内に極秘に設立された、スパイ養成学校「D機関」。「死ぬな。殺すな。囚われるな。」、軍隊組織を真っ向から否定する戒律を持つ此の機関を、たった1人で作り上げた結城中佐の正体を暴こうとする男が現れた。英国紙「タイムズ」の極東特派員アーロン・プライス。

 

だが“魔王”と呼ばれる結城は、丸で幽霊の様に、一切足跡を残さない。或る日プライスは、ふとした発見から結城の意外な生い立ちを知る事になるのだが・・・。

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誤算」、「失楽園」、「追跡」、そして「暗号名ケルベロス 前篇&後篇」と、4つの短編小説から構成される「パラダイス・ロスト」だが、上記した梗概「追跡」が断トツに面白かった。何しろ謎多き「D機関」の中でも、最も謎な存在の結城中佐の過去が明かされるというのだから。「結城中佐には、こんな過去が在ったのか・・・。」と驚かされる事実が次々に明らかにされるのだが・・・。

 

幼少時に見ていたアニメ「ラムヂーちゃん」(動画)のOP曲に「変身パッと出て 騙す積りが騙される♪」という詩が在るのだが、スパイの世界は「騙す積りが騙される。」で溢れ返っているに違いない。そんな思いを強くさせた4つの短編。

 

「ジョーカー・ゲーム」、又は「ダブル・ジョーカー」を読まずして、此の「パラダイス・ロスト」を読んだならば、「星4つ」という総合評価を下したかもしれない。しかし前2作が共にレヴェルが高かった(共に星4つ。)だけに、其れ等と比較してしまうとどうしても見劣りしてしまう。「追跡」及び「暗号名ケルベロス 前篇&後篇」は合格点を与えられる内容だが、「誤算」と「失楽園」は柳氏の筆力を考えると、物足りなさを感じてしまうのだ。

 

総合評価は、星3.5個とする。


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