「新聞で自分の事を『死の商人』と書かれて大きなショックを受け、イメージアップの為にアルフレッド・ノーベル氏は、自身の財産を基にしてノーベル賞を創設した。」という話は知っていたが、其の新聞記事というのが「(彼の)兄で在るルードヴィ氏が亡くなったのを、ノーベル氏が亡くなったと勘違いして書かれた『死の商人、死す。』という物だった。」というのを、先日読了した小説「PK」で初めて知った。即ち、誤報では在るが、ノーベル氏は自身の訃報を“生きている間”に見てしまった訳だ。其れだけでもショックだろうに、「死の商人、死す。」とか「アルフレド・ノーベル博士:可能な限りの最短時間で、嘗て無い程大勢の人間を殺害する方法を発見し、富を築いた人物が昨日死亡した。」なんぞと書かれていたのだから、そりゃあイメージアップを図りたくなるのも判る。
そんな経緯で創設されたノーベル賞、今年度から賞金額が減額されるのだとか。
*********************************
「ノーベル賞の賞金2割減に 財団の財政事情悪化」(6月12日、スポニチ)
ノーベル賞の運営団体で在るスウェーデンのノーベル財団は11日、財団の財政事情により、今年のノーベル各賞の賞金を此れ迄の1,000万スウェーデンクローナ(約1億1,100万円)から20%減らし、800万クローナ(約8,880万円)にすると発表した。
財団は、賞の創設者で在る同国の化学者、アルフレド・ノーベルの遺産を運用して賞金や運営費等を賄っているが、此処10年間、運用利益が経費を下回る状況が続いていると言う。
賞金額は2001年に900万クローナから1,000万クローナに引き上げられていた。減額は「長期的に、賞の継続性を守る為。」で、来年以降の賞金額は未定としている。
ノーベル賞は生理学・医学、物理学、化学、文学、平和、経済学の6賞が在り、毎年10月に受賞者が発表され、12月にストックホルムとオスロで授賞式が行われる。
*********************************
ノーベル氏の発明したダイナマイトは、19世紀を代表する発明の1つと言って良いだろう。ダイナマイトの発明により工事現場での岩盤の破壊等、作業の効率化が大幅に図られる様になったからだ。勿論、「戦争で爆薬として用いられ、従来の比では無い『大量殺戮の道具』となってしまった。」という負の面も在るが、兎にも角にもダイナマイトが我々人類の生活を大きく変えたのは事実。其れだけに、ダイナマイトは莫大な富を生み出した。
とは言え、ダイナマイトの発明から約150年が経とうとしており、如何に莫大な富を生み出したとはいえ、そして如何に其の富を運用しているとはいえ、「毎年、何人もの受賞者に各々1億円以上もの賞金を授与していては、財産が減る一方ではないのか?」という疑問がずっと在った。なので、今回の減額のニュースには、「矢張りなあ。」という思いが在る。
「ノーベル財団が実際に、何れ位の賞金を払って来ているのか?」を知る“1つの指標”として、過去25年間、即ち、1987年~2011年迄の「生理学・医学」、「物理学」、「化学」、「文学」、そして「平和」の5賞に関して、各々の賞金支払総数を調べてみた。「受賞者総数」では無く、「賞金支払総数」としたのは、例えば「或る年に複数人が同じ賞を受賞しても、同じテーマで受賞した場合(共同研究等。)には、複数人で賞金を分け合う。」という形になっている様なので。又、「経済学」を入れなかったのは、此の賞はノーベル氏身が設置&遺贈したものでは無く、其れ故に賞金もノーベル財団からでは無く、スウェーデン国立銀行から拠出されているからだ。
*********************************
「1987年~2011年迄のノーベル賞賞金支払総数」
【生理学・医学】 26回
【物理学】 30回
【化学】 31回
【文学】 14回
【平和】 25回
*********************************
ノーベル財団は過去25年間で、合計126回も賞金を支払っている。此れは平均で、約5.0回/年の支払いという事になる。賞金を20%減額すれば、1年で約1億1,100万円浮く計算になるのだから、馬鹿にならない額では在る。
自分の様な凡人にとっては「20%減額」という目先の金額に関心が行ってしまい勝ちなのだけれど、多くの受賞者は賞金自体よりも「ノーベル賞受賞」という名誉を重んじる事だろう。勿論、「ノーベル賞受賞者」という事で、其の後には多くの報酬も付随して来るだろうし。