五木ひろし氏は、歌が上手い。其れは、自分も認めている。だが、歌の上手い彼で在っても、“合う歌”と“合わない歌”が在る。1ヶ月程前だったか、或る音楽番組にて彼が、自分の持ち歌では無い“昭和の名曲”を次々と歌っているのを見て、そう強く感じた。彼の声質や歌い方が、其の歌に合わないケースが在るのだ。
今から46年前の1975年、「演歌チャンチャカチャン」【歌】という歌が大ヒットした。「昭和の名曲の“さび”の部分だけを、メドレー形式で歌い上げる。」というコミック・ソング。「演歌」とタイトルに付いているけれど、中には「演歌って呼べるのか?」という物も含まれており、厳密に言えば「昭和歌謡曲チャンチャカチャン」という感じだ。で、「演歌チャンチャカチャン」に収録されている歌の内、1曲だけ知らない物が在った。「なぜか忘れぬ 人ゆえに♪」というさびだけなのだが、深く印象に残った。
大の懐メロ好きなのに、此の歌が「緑の地平線」というタイトルなのを知ったのは、比較的最近の事。1935年に公開された邦画「緑の地平線」の主題歌で、楠木繁夫氏という方が歌っておられたのだとか。YouTubeで彼が歌っている【歌】のを聞いたが、さびだけでは無く、通して聞くと「良い曲だなあ。」と。
以降、YouTubeで此の歌を何度も聞いているのだが、同時に、多くの歌手がカヴァーしている事が判明。把握出来ただけでも、次の方々がカヴァーしている。
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・石川さゆりさんヴァージョン【動画】
・石原裕次郎氏ヴァージョン【歌】
・ちあきなおみさんヴァージョン【動画】
・美空ひばりさんヴァージョン【歌】
・島倉千代子さんヴァージョン【歌】
・大川栄策氏ヴァージョン【歌】
・八代亜紀さんヴァージョン【歌】
・森昌子さんヴァージョン【動画】
・青木光一氏ヴァージョン【動画】
・近江俊郎氏ヴァージョン【動画】
・都はるみさんヴァージョン【歌】
・藤山一郎氏ヴァージョン【歌】
・鶴岡雅義と東京ロマンチカヴァージョン【歌】
・田端義夫氏ヴァージョン【歌】
・小柳ルミ子さんヴァージョン【歌】
・二葉百合子さんヴァージョン【歌】
・細川たかし氏ヴァージョン【歌】
・三橋美智也氏ヴァージョン【歌】
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錚々たる顔触れ。名曲だからこそ、名歌手達がカヴァーして来たのだろう。そんな歌を、懐メロ好きを標榜し乍ら、つい最近迄タイトルどころか、通して聞いた事すら無かったのだから恥ずかしい。
全ヴァージョンを聞いて戴きたいが、同じ歌で在っても、歌う人によって結構印象が違う。「合わないなあ。」と思う人も居れば、「オリジナルの楠木繁夫氏よりも良い!」と思う人も。飽く迄も私見だが、一番良かったのはちあきなおみさんヴァージョン。声質も歌い方も、ぴたりと合っている。次によかったのは三橋美智也氏ヴァージョンで、3番目は近江俊郎氏ヴァージョンだ。
何度も何度も聞いて思うのは、「曲調及び歌詞と、『緑の地平線』というタイトルが乖離している様に感じる。」という事。名曲だからこそ、其の乖離が凄く気になる。