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「芥川賞に村田沙耶香さんの『コンビニ人間』」(7月19日、読売新聞)
第155回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日夜、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に村田沙耶香さん(36歳)の「コンビニ人間」(文學界6月号)、直木賞に荻原浩さん(60歳)の「海の見える理髪店」(集英社)が決まった。
村田さんは千葉県印西市出身。玉川大卒。今回、初の候補で賞を射止めた。
受賞作は、同じコンヴィニ店でアルバイトを続ける独身女性が主人公。マニュアルの御蔭で「普通」の店員らしくなれると感じる彼女の日々と、少し変わった男性との出会い等を綴る。
芥川賞の川上弘美選考委員は、「コンヴィニでしか生きられない変わった人物を描き乍ら、『普通』と呼ばれる人への批判も過不足無く、ユーモアを持って表現している。」と語った。
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子供の頃から本が大好きで、一時期は「作家になりたい。」と夢想した事も在る。だから、作家に対しては敬意を持っているし、著名な文学賞を受賞した作品は、どうしても手に取ってしまう。
文学賞が粗製乱造される中、自分の中で「芥川賞」と「直木賞」は別格の存在では在るが、昨今の芥川賞受賞作には「何でこんな作品が?」と疑問に感じてしまう物が少なく無い。一方、「無名・新人及び中堅作家による大衆小説」が対象の直木賞の場合は、“大衆小説”という縛りも在って、受賞作は熟れた物が多く、ガッカリさせられる事は少ない。
昨夜、第155回芥川賞及び直木賞が発表されたが、自分は直木賞に注目していた。と言うのも、候補作の1つだった「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(著者:湊かなえさん)が受賞するかどうかが気になっていたからだ。
湊かなえさんは、売れっ子作家の1人。其れは否定しないが、彼女の作品に対して自分は、一貫して厳しい評価をして来た。今回候補となった「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は未読だが、2008年のデビュー作「告白」以降、刊行された彼女の作品は全て読んで来た。其れ等の評価は、以下の通り。
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=湊かなえさんの作品=
「告白」 星3.5個
「少女」 星3つ
「贖罪」 星3つ
「Nのために」 星2.5個
「夜行観覧車」 星2つ
「往復書簡」 星2.5個
「花の鎖」 星2.5個
「境遇」 星2つ
「サファイア」 星3つ
「白ゆき姫殺人事件」 星1つ
「母性」 星2つ
「望郷」 星3つ
「高校入試」 星3つ
「豆の上で眠る」 星2.5個
「山女日記」 星3つ
「物語のおわり」 星3.5個
「絶唱」 星3.5個
「リバース」 星3.5個
「ユートピア」 星2つ
「ポイズンドーター・ホーリーマザー」 未読
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デビューから8年間で、20作品を刊行。コンスタントに刊行し続けているというのは凄いし、何や彼や言って全作品を読み続けているのだから、彼女の作家としての能力を全否定している訳では無い。でも、“読み終えて非常に不満が残る作家”なのは事実。
「何の作品も、作風が余り変わらない。」とか、「作品のタイトルが、とてもダサい。」といった部分は看過出来ても、「文章の拙さ。」及び「キャラクターの描写が浅い。」というのは、どうしても不満が残ってしまうのだ。
今年、彼女は第29回「山本周五郎賞」を受賞した。受賞作品は「ユートピア」だったが、自分は上記した様に、此の作品に「星2つ」と低評価を下していたので、「嘘だろ・・・。」と驚いた。
2013年、「望郷」で初めて直木賞候補に選ばれたが、個人的にはピンと来る作品では無かったので、落選した際には「そうだろうな。」という思いが。でも、今回は山本周五郎賞を受賞した後なので、直木賞受賞という可能性が現実味を帯びていた。
今回、直木賞の候補となった「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は未読で在るから、此の作品の良し悪しは何とも言えないが、デビュー以降の流れを思うと、良い意味で“大化けした作品”だとは思えない。だから、「直木賞受賞とならなければ良いが・・・若し受賞してしまったら、自分の中で直木賞の価値が暴落してしまうから。」という思いが在った。正直、彼女が今回落選した事にホッとした思いが在る。
くどい様だが、彼女の作家としての能力を全否定している訳では無い。全否定していたら、刊行される度、作品を読み続けたりはしない。“光る物”を感じているだけに、上記した不満点を改善し、“大化け”して欲しいのだ。そして、大化けした暁に直木賞を受賞して、自分を心から「良かった。」と言わせて欲しい。