昨年の記事「夫婦漫才のコンビでは、一番好きだった」でも触れたが、好きだった夫婦漫才のコンビの1組に暁伸・ミスハワイ両師匠(動画)が居る。ミスハワイ師匠は1998年に72歳で亡くなられたが、残された暁伸師匠も先月の26日、心筋梗塞にて亡くなられたとの報道が。96歳という年齢を考えれば、大往生と言って良いだろう。「芸人」と呼べる人物が又1人、鬼籍に入ってしまった。合掌。
最近でこそ見聞しても違和感を覚えなくなったけれど、1990年に「ハローワーク」なる愛称が導入されて以降、暫くの間は此の愛称がピンと来なかった。正式名称「公共職業安定所」は、自分の様な昭和生まれの人間からすると、略称「職安」の方がピンと来ていたので。「『職安』というのは暗いイメージを感じるので、明るいイメージの『ハローワーク』を愛称に選んだ。」という事だったが、愛称の導入によりイメージは明るくなったにせよ、「就職先の決まらない人が大勢居る現実」を考えると、肝心な内情が明るくなったとは言えないだろう。
此の程読み終えた小説「ハロワ」(著者:久保寺健彦氏)は、ハローワークで働く人達及びハローワークを訪れる求職者達を描いた作品。
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貴方の御仕事、捜します!
「ハローワーク宮台」には、訳在りな求職者達が次々に訪れる。其処で相談員として働く沢田信(28歳)は、理想と現実の間で日々奮闘中。果たして、彼等に合った仕事を見付ける事が出来るのか!?
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ハローワークで働く人達にも色々な人間が居る様に、求職者達にも同様に色々な人間が居る。主人公の沢田信は民間の人材紹介会社で働いていたが、或る一件で自ら辞職し、ハローワークで相談員として働く事になる。相談員と言っても「正規雇用」では無く、「嘱託」という立場。「1人でも多くの人が職に就ける様に。」と必死で頑張る彼だが、求職者達への思い入れが強くなり過ぎて、相談員としての実績を上げられないというジレンマに陥ってしまう。
沢田と対照的なキャラクターなのが、同期入所の樋口。沢田とは同年代なのだが、彼は正規雇用の立場。「現場でずっと働きたい。」とする沢田を、「将来は、事務方として働きたい。」と考えている樋口は嘲り、又、人付き合いに関しても“損得勘定”を最優先している様な所が見受けられる。
必死で仕事を捜す求職者が居る一方、真剣に取り組んでいるとは思えない者も居る。後者の求職者達を沢田は何とか職に就け様と奮闘するが、結果的に空回りに終わってしまう事が少なくない。そんな彼が挫折を積み重ねて行き、そして恋をして行く中で、相談員としてだけでは無く、人としても成長して行くのが見所。
ハッピーな展開よりも、心が沈んでしまう展開の方が多いストーリー。特に“旧友”と再会し、相談員として彼の求職をバックアップする中で迎えた結末は、余りにもほろ苦い。厳しい労働環境を思えば、そういう結末も存在し得るのだろうが・・・。
総合評価は星3.5個。
此の小説の中に登場する人達の様に、求職者の中には「真剣に求職活動に取り組んでいるとは到底思えない人達。」というのも実際に居るとは思いますが、多くの求職者達は必死で捜している筈。其れなのにホームレスと称される人達を十把一絡げにして「ハローワークには仕事が溢れている。実際に電話したが、『仕事は在りますよ。』と言われたので、間違い無い。だから、ホームレスは怠惰な人達だ!」と決め付ける様な人が居るのは、本当に残念な事です。電話で問い合わせが在った際、「仕事は在りませんよ。」なんて真っ正直に答えるスタッフなんぞ居る訳が無いし、求人情報で「年齢や経験を問わない。」と書いてあっても、実際には「非常に限定した募集」というのが少なくないのは良く見聞する話。怠惰な人間を詰るのは未だしも、必死で求職している人達迄も一括りにして詰る風潮は、本当に改まって欲しいものです。
産業構造の変化や業務の効率化が進む中、求人絡みの業務を民間にもっと委ねるというのも一つの手では在りましょうね。唯、一律的な郵政民営化によって過疎地が更に疲弊した様に、何でもかんでも民間に委ねるという事になるのも、一抹の不安を感じますけれど。
日雇い労働者に仕事を紹介し、その紹介料として日当からピンハネする民間職員(?)。
民間経営である以上、利潤を追求するのは当り前で、その究極のシステムですよね。
やはり求人情報提供は公的機関が税金を使ってやるべきでしょう。ただし、そこの職員は身分保障のある正規の公務員ではなく、1年毎契約更新の臨時職員にすべし。
真面目に親身に仕事をしなければ、1年後には自分が求職の側に回りかねないと思えば、求職者につれない態度は取れないでしょう?
ホームレスに宿泊施設を提供する事で、彼等が受給している生活保護費の殆どをピンハネしている業者が問題になったりしましたね。民間企業で在る以上、仰る様に利潤追求は不可避。又、「従事している職員を、何で査定するか?」という指標も難しい。
年金問題が大きく世間を騒がしていた頃、不安に駆られた人々が年金事務所に大挙しました。其の際、面倒な窓口業務は殆どがアルバイトのスタッフに委ねられ、正規職員は衝立の向こう側に居た・・・なんて話も在りました。
公務員を全て“悪者”に仕立て上げるスタンスは好きじゃないけれど、民間企業勤めしか経験の無い自分からすると、どうしても公務員の体質には“温さ”を感じてしまう。一番問題なのは、様々な面で“危機意識”が感じられない事。
「真面目に親身に仕事をしなければ、1年後には自分が求職の側に回り兼ねない。」という状況にするというのは、其れだけ求職者に対して真剣に対峙せざるを得ない事に繋がるだろうし、悪くないでしょうね。