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江戸の両国橋近くに住むおゆうは、老舗の薬種問屋から「殺された息子の汚名を雪いで欲しい。」と依頼を受け、同心の鵜飼伝三郎(うかい でんざぶろう)と共に調査に乗り出す・・・が、彼女の正体はアラサー元OL・関口優佳(せきぐち ゆうか)。家の扉を潜って、江戸と現代で二重生活を送っていたのだ。
優佳は現代科学を駆使し謎を解いていくが、如何にして江戸の人間に真実を伝えるのか。2つの時代を行き来し乍ら、事件の真相に迫る!
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第13回(2014年)「『このミステリーがすごい!』大賞」に“隠し玉”として選ばれた小説「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」(著者:山本巧次氏)。「現代に生きる元OLの関口優佳が、祖母から相続した家の中に在る“タイム・トンネル”を利用して、江戸と現代を行き来し乍ら、江戸で起こった謎を解く。」という、時代ミステリーとSFを合わせた作品。
指紋鑑定やDNA型鑑定、ルミノール反応等、現代の捜査では普通に使われている事柄も、江戸の世では存在しない。優佳が江戸から持ち帰った“証拠品”を、現代で分析し、色々な情報が得られるのだけれど、其の結果を如何に江戸の世に住む伝三郎達に伝えるかが、此の小説の醍醐味と言えるだろう。ドラえもんのひみつ道具に「連想式推理虫メガネ」というのが在るけれど、優佳が分析結果を伝三郎達にどう伝え、そして真実の方向にどう誘導するかという点で、此の連想式推理虫メガネと似た匂いを感じたりもする。
ミステリーと言えば、どんでん返しが重要な要素。「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」でもどんでん返しが設けられており、1つのどんでん返しは想像通りだったけれど、伝三郎に関するどんでん返しは想像外。今年で56歳になる山本氏は、此の作品がデビュー作になるが、キャラクター設定や筋立ての上手さ等、とても新人作家とは思えないレヴェルで在る。
総合評価は、星4つ。