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もう直ぐ「ワクチン戦争」が勃発する!?新型インフルエンザ騒動で激震した浪速の街を、新たな危機が襲った。霞が関の陰謀を察知した医療界の大法螺吹き(スカラムーシュ)・彦根新吾(ひこね しんご)は壮大な勝負を挑むべく、欧州へ旅立って行く。浪速を、そして此の国を救う事は出来るのか。
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海堂尊氏の作品には、人気シリーズが多い。「海堂シリーズ現代篇」も其の1つだが、海堂作品の大きな特徴は「様々なシリーズの登場人物達や設定が、絶妙に繋がっている。」事。「田口・白鳥シリーズ」を軸にして、他のシリーズが縦横無尽に広がっているのだ。
今回読了した小説「スカラムーシュ・ムーン」は、「海堂シリーズ現代篇」の第4弾に当たり、“スカラムーシュ”の綽名を持つ彦根新吾が主人公。医学部の先輩から「底が見えない、得体の知れなさが在る。」と言われた彼が、“浪速の独立構想”を実現すべく、策士として国内外を奔走するというストーリー。
「2009年の新型インフルエンザ騒動」、「2011年の鳥インフルエンザ騒動」、そして「大阪都構想」等、実在の出来事や人物をメタファーしているので、ストーリーの中に没頭してしまう。
「浪速独立構想を実現したい側と、阻止したい側との虚々実々の駆け引き。」、そして「目的意識を持ち得なかった若人達が、彦根が現れた事により、必死になって会社を立ち上げる。」というのが、「スカラムーシュ・ムーン」の大きな柱となっている。前者では「国内外を舞台にした壮大さ」、後者では「幾多の困難に挫けそうになり乍らも、“仲間達”と協力し合い、困難を克服、そして成長して行く若人の姿。」に心が動かされた。
近年の海堂作品には不満足な物が少なく無かったけれど、「スカラムーシュ・ムーン」は久々に読み応えが在った。特に、最後の大どんでん返しは圧巻。不撓不屈の彦根は健在だ。
総合評価は、星4つとする。