ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「遺譜 浅見光彦最後の事件」

2014年08月27日 | 書籍関連

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浅見家に届いた1通の手紙。其れは、本人が知らない間に企画された、浅見光彦34歳の誕生日パーティの案内状だった。発起人の1人で在る本沢千恵子は、美貌ドイツヴァイオリニストのアリシア・ライヘンバッハを伴い、浅見家を訪れる。丹波篠山で町を挙げて行われる音楽イヴェントシューベルティアーデ」に2人が出演する際、ボディーガードを頼みたいと言うのだ。アリシアは祖母・ニーナから、彼の地で「インヴェ」という男に託された楽譜を預かって来る様にと言われていた。一度は断る浅見だが、刑事局長の兄・陽一郎からの特命も在り、現地に赴くになる。

 

賢兄愚弟典型、浅見家に育った次男の光彦を、過去の盟約追い詰める軽井沢、丹波篠山、ヨーロッパを舞台に、史上最大級の謎の連鎖の幕が開く。

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作風が気に入ると、其の作家の作品を全て読破したくなるが在る。内田康夫氏も、そんな作家の1人だ。200冊を超える作品、全てを読破して来た。

 

彼の作品の中で最も知られているのは、数多く映像化もされた「浅見光彦シリーズ」だろう。本業フリールポライターだが、明晰な頭脳で数多くの難事件を解決して来た素人探偵でも在る。しかし、刑事局長という優秀な兄を持ち、“33歳”で其の兄の家に居候している彼は、自身を「賢兄愚弟」の典型と卑下している。

 

今回読了した「遺譜 浅見光彦最後の事件」は、1985年に「後鳥羽伝説殺人事件」でデビューした浅見光彦にとって、大きな意味を持つ作品。「デビュー以来、年齢が“33歳”で止まったの設定。」だった彼が、此の作品ではを破って34歳を迎えるというのも、理由の1つ。

 

金田一耕助にとっては「病院坂の首縊りの家」、シャーロック・ホームズにとっては「最後の事件」(又は「最後の挨拶」)、エルキュール・ポアロにとっては「カーテン」、そしてミス・マープルにとっては「スリーピング・マーダー」と、“名探偵”には“最後の事件”が設定された。内田氏も以前より、「人気シリーズの主役で在る浅見光彦に、どういう最後の事件を設定すれば良いのか?」という事を考えておられ、4年越しで「遺譜 浅見光彦最後の事件」を書き上げた。

 

一部ネタバレになってしまうが、此の作品で光彦は「3つの決断」を下す。「結婚しようという決断」、「34年間住み慣れた浅見家からの独立するという決断」、そして「探偵業から引退するという決断」で在る。浅見シリーズのファンにとっては何れもショッキングな決断だが、一番ショッキングなのは「探偵業から引退するという決断」だろう。ドラマだったかで「何時も、子供の儘ではられない。」という台詞が在ったけれど、光彦の場合「何時迄も、33歳の儘では居られない。」という事なのだろう。其れは其れで判らないでは無いが、寂寥感をどうしても覚えてしまう。

 

以前、内田氏が語っていたのだが、彼は「事前詳細プロットを用意する事無く、書いて行く中で諸々辻褄を合わせて行く。」というのが執筆スタイルなのだとか。「良くもまあ、そんな事が出来るなあ。」と凡人の自分なんぞは感心してしまうのだが、今回の作品でも意外な関係性や謎解きのヒント随所に盛り込まれており、「事前に詳細なプロットを用意しないで、良くこんなにも上手く辻褄が合わせられるものだ。」と敬服

 

彼が解決して来た難事件に関係する人々、特に“マドンナ達”が登場するのはファンとして嬉しいし、ストーリー的にも“最後の事件”に相応しい豪華さ。(陸軍登戸研究所が登場するとは・・・。)

 

浅見光彦シリーズは、此れで終わってしまうのか?“最後の事件”と位置付けた以上、“34歳以降の光彦”としては、もう謎を解く事は無いと思われる。しかし、彼自身が最後に語っている様に、「此れ迄に書き溜めた未発表の事件簿が4つ在る。」という事だし、時間を遡って“33歳以前の光彦”としての謎解きは在ると思うし、是非在って欲しい。

 

総合評価は、星3.5個


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