漫画家の水木しげる氏が11月30日、多臓器不全で亡くなられた。享年93。
今年5月、連載中の漫画が唐突に最終回を迎えた事で、水木氏の体調を懸念する声が上がっていた。同氏の事務所は重病説を否定してはいたが、芳しい体調では無かったのかもしれない。
人間は誰しも、永遠に生き続ける事は出来ない。其れは判っているのだが、水木氏の場合は“生死”を超越した雰囲気が在り、心の何処かに「水木氏は死なない。」という非現実的な思いが在ったりもした。其れだけに、今回の訃報はショックだった。
手塚治虫氏(享年60)や石ノ森章太郎氏(享年60)、藤子・F・不二雄氏(享年62)、園山俊二氏(享年57)、赤塚不二夫氏(享年72)等、自分が子供の頃、夢中になって作品を読んでいた漫画家達は概して短命。そういう意味で、水木氏の場合は大往生と言えるのかもしれないが、寂しい思いは募る。
水木作品と言えば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「ゲゲゲの鬼太郎」だろう。自分の場合、漫画版も読んではいるけれど、印象深いのはアニメ版、其れも1970年代に放送された第2シリーズ【動画】だ。特に第7話「猫又」は、強烈に覚えている。
【第7話「猫又」】
太平洋戦争では兵士としてニューギニア方面に出征し、“地獄”を見た水木氏。絵柄から南方の雰囲気が漂う「猫又」は、ニューギニア方面に対する彼の強い思いが感じられたし、又、同時に強烈な怖さが伝わって来る作品でも在った。
「ゲゲゲの鬼太郎」も好きな作品だが、水木作品ではもっと印象に残っている物が在る。9年前の記事「マイナーな漫画だけど好き」で取り上げた「テレビくん」だ。詳細は記事に記したけれど、実に不思議な雰囲気の作品で、「主人公の少年の様に、自分もブラウン管の中に入れるのではないか。」なんぞと、子供心に思ったりした物。
「ゲゲゲの鬼太郎」の第2シリーズ、目玉おやじの声を担当されていた田の中勇氏が亡くなられたのは5年前の事。今年1月には、ねずみ男の声を担当されていた大塚周夫氏が、10月には「ゲゲゲの鬼太郎」のOP曲【動画】を歌われていた熊倉一雄氏が、そして今回、水木氏が鬼籍に入られてしまった。
合掌。
水木さんの漫画には、弱者を捉える優しさがありますね。その経験には、戦争で、東南アジアの後進国を転戦した事にも原因がありそうです。言葉が通じない現地人と如何に交わるか。そうした異端の彼らを、エイリアンと見るか、同じ人間と見るかの違いがあったと思います。
過酷な戦争体験がありながらも、奢らず、実に賢明な人物だったと思います。戦争は一人でするものでは無く、組織や全体でやるもの。戦争をリアリズムで捉えれば民主主義につながる不思議がありますね。
昭和の「仮面ライダー・シリーズ」と同様、水木作品には異形の存在が抱える哀しみ、そしてそんな者達に対する優しい眼差しが感じられました。
作品名は忘れましたが、過酷な戦時中に在り乍ら、南方の現地人達との交流が描かれた水木作品が在りましたね。