ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「パーフェクト・プラン」

2009年02月20日 | 書籍関連

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ノックス十戒

1.犯人は物語の当初に登場していなければならない。
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない。
3.犯行現場に秘密の抜け穴・通路が在ってはならない。
4.未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない。
5.中国人を登場させてはならない。(当時、黄禍論を背景として、中国人が悪事を行なう低俗なスリラー横行していた為とされる。)
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない。
7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人で在ってはならない。
8.探偵は読者に提示していない手掛かりによって解決してはならない。
9.“ワトスン役”は、自分の判断を全て読者に知らせねばならない。
10.双子・一人二役は、予め読者に知らされなければならない。
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ミステリー好きには広く知られた「ノックスの十戒」。イギリス聖職者にしてミステリー作家でも在ったロナルド・ノックス氏が1928年に、「ミステリー小説を書く上での10の禁じ手」として挙げた物だ。又、同年にやはりミステリー作家のS・S・ヴァン=ダイン氏が、「ヴァン・ダインの二十則」という禁じ手を発表。ミステリーのトリックを巡っては古今東西、「あのトリックはアンフェアだ。」、「斬新なトリックで在り、アンフェアには当たらない。」等の賛否両論が何度も巻き起こっている。アガサ・クリスティ女史の「アクロイド殺し」は、その手の賛否両論が巻き起こった有名な作品の一つと言える。

 

「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」はあくまでも指標で在り、絶対にその禁じ手を使ってはならないという訳でも無い。実際問題、これ等の禁じ手が発表されて以降、意図的に禁じ手を用いた作品も生み出されている。個人的には「多少の違和感は在ったとしても、そのストーリーに深みを与える物で在れば、禁じ手の使用も時には在り。」と考えている。

 

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代理母生計を立てている小田桐良江は、嘗て出産した子供・三輪俊成が母親の咲子に虐待されている事を知り、発作的に俊成を三輪家から連れ出してしまう。その事を知った嘗ての愛人・田代幸司と兄貴分でアングラカジノの店長・赤星サトルは張龍生に事態の収拾委ねる

 

龍生は、悪夢の様な仕手戦に破れた株屋。そんな龍生がとてつもない誘拐計画を思い付く。龍生の父で認知症の症状が見られた泰生も加わり、風変わりだが結束の固いチームが、「身代金ゼロ!せしめる金は5億円!」という計画をスタートさせる。彼等は、如何なる方法でそんな大金をせしめるのか?
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『このミステリーがすごい!』大賞」の第2回大賞受賞作「パーフェクト・プラン」(柳原慧さん)の梗概。「代理母」、「胎児細胞」、「ネット・トレーディング」、「ハッカー」、「瞬間像記憶」、「幼児虐待」等々、今日日のテーマが盛り込まれている。特に機械音痴の自分にとっては、ハッカーに関する情報が詳細に記されているのが興味深かった。

 

ミステリアスな登場人物達、特に代理母を生業にしている良江と、何処か陰を秘めた龍生のキャラクターが気になる。次の展開が気になるストーリー建てもなかなか良い。大賞受賞が頷ける作品では在る。

 

唯、「犯人探し」という観点から言えば、上記したどれが該当するかはネタバレになるので書かないが、禁じ手が用いられているので不満足さは残る。前半から中盤に掛けて濃密なストーリーだっただけに、エンディングが残念な感じも。

総合評価は星3.5個


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7 コメント

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うわこの十戒 (Spa supernova)
2009-02-20 12:24:10
スピリチュアルブームかつ中国バッシングの現代(1990年代後半以降)にもあてはまりそうですね。
人間進歩ないなあ^^;。
まあ「怪しい中国人(華僑か香港・マカオ人)」って日活アクションの定番でもあるんですが^^;。

スピリチュアルといえばコナン・ドイル氏が晩年はまったということも思い出しました。
クリスティの「降霊術がらみの殺人」ネタも定番ですが、ドイル先生の晩年作品はムチャクチャなのあります^^;。

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Unknown (マヌケ)
2009-02-20 12:58:08
証拠品に触れたり、殺人現場に立つことで断片的に犯人像を見ることができる超能力を身につけた主人公が、犯人を追い詰めることで最悪の結末を阻止し、未来を変える能力まであることを知る・・・よくあるミステリーです。 交通事故で数年間の植物状態から目覚めると事故当夜の記憶のままなのですが現実にはタイムスリップしたかのような自分がいて、婚約者も既に他の男と結婚し、子供までいて・・・悲劇の主人公は、その後特殊な能力ゆえにキワモノ扱いされ、引きこもりに。 彼の能力については半信半疑の警察も連続殺人事件の捜査協力を渋々申し出るも・・・実は犯人は警察の中にいて、追い詰められた犯人は最後は自殺。 警察であるがゆえに警戒心を持たれないことから犯行が重ねられた・・・後味の悪い結末。 現場に落ちていた枯葉から犯人の履いていた靴を想像できるのに、犯人がすぐそばにいても気づかないのかよー!というもどかしさは不自然というより、読者にたいする仕掛けなのか・・・ミステリーを構築する時にストーリー上不自然な状況や結論を導くためのつじつまあわせのための部分、超能力や超常現象で片付けてしまう逃げは結構あると思います。 以前読んだ田口ランディの「アンテナ」という作品は一時期はやったツイン・ピークスのようで、よくわからなかったです。 犯人が結局誰だったのかがはっきりわからないまま終わるというのもありなんですよね。 あまり好みではありませんけど。
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第5条の意味 (青空百景)
2009-02-20 15:11:57
小林信彦が、自作「神野推理」シリーズの中で、「中国人を登場させてはならない」理由について新解釈をしていました。
この当時の欧米人にとって、東洋人の顔は個体識別ができず、安易な2人1役等の横行につながりかねなかったのでは、と。
松坂と岡島がレッドソックス入団当時、2人の顔の区別がつかないと本気で言っていたチームメートがいたそうですし、あり得る話かもしれませんね。
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>Spa supernova様 (giants-55)
2009-02-20 19:29:34
書き込み有難う御座いました。

東西を問わず、その歴史を振り返ると、技術的な進歩は著しくとも、人間そのものは余り進歩してないんですよね。だからこそ、戦争が繰り返される訳で・・・。

怪しい中国人の役、昔は「ドン・ガバチョ」こと藤村有弘氏(http://www.youtube.com/watch?v=Eq-M1ncusJs)が良く演じておられましたね。あの胡散臭い雰囲気が好きでした。映画「20世紀少年 第2章 最後の希望」では、小松政夫大先生がインチキ臭い中国人?の役を演じており、藤村氏の事をふっと思い出した次第。
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>マヌケ様 (giants-55)
2009-02-20 19:34:57
書き込み有難う御座いました。

最近好んで読んでいる三崎亜記氏や伊坂幸太郎氏、道尾秀介氏等の作品には神秘的な要素に頼った“謎解き”といった物も在り、これ等なんかは「ノックスの十戒」には反してしまう事でしょう。でも、それを凌駕する“筆力”が在るからこそ多くのファンが居る訳で、ミステリーの世界も時代と共に自ずと変容が求められるのかと。
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石田衣良氏の「40」という作品を読んでいるところです (マヌケ)
2009-02-22 14:01:13
「バスジャック」の中の短編で雨の日に見知らぬ女性が図書館と間違えて本を借りに来るストーリーのシュールさが心にくるものがあったのでしょう。 怖い夢で明け方に目が覚めてしまいました。 ピンクのセーターにベージュのレインコート姿の女性が出てきて、少しウェーブのかかったロングヘアが濡れそぼっていて、本を貸して下さいと言われ、顔をよく見ようと覗き込むと顔が描かれていないマネキンでした。 三崎亜記の筆力にやられました。 シュールな世界というのは夢の中にいるような感じにさせる表現がとられると言いますか、自分が勝手にそう思うのですが、なにかカーテンがかかっていて、覗いてはならないものを覗くようなゾクゾク感があります。 そういう感覚って脳のどこかに残るのでしょうか。 単に自分が影響されやすい性格なのか、ですかね? 石田衣良い氏の「フォーティー」という作品を読んでいますが、主人公が40歳で脱サラした男性なのですが、人生半ば過ぎて折り返し地点での自分を見つめなおす作品です。 半分終わったところでよい方の半分が終わった、残り半分は先細りの人生でないことを祈るような気持ちは私も右に同じです。 作品的にはあまりおもしろくありません。
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>マヌケ様 (giants-55)
2009-02-22 20:15:11
書き込み有難う御座いました。

今、三埼亜記氏の近刊本「廃墟建築士」を読んでいる最中です。「日常的な世界」に「非日常的な世界」をスルッと滑り込ませるのを得意とする彼ですが、その非日常的な世界の着眼点が良い。「或る日、突然隣町との戦争が始まった。」という設定の処女作「となり町戦争」もそうですが、「良くもまあ、こんな設定を思い付く物だ。」と毎回思わされます。読破したら、記事にしてアップする予定。
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