************************************************
通常の兵器では全く歯が立たない、巨大不明生物“禍威獣”が、日常的に現れる様になった日本。此れに対し政府は、禍威獣対策の専門家チーム“禍特対”を設立する。そして、任務に当たる、班長・田村君男(西島秀俊氏)、神永新二(斎藤工氏)、浅見弘子(長澤まさみさん)、船縁由美(早見あかりさん)、そして滝明久(有岡大貴氏)の5人に危機が迫った或る日、空から銀色の巨人が現れ・・・。
************************************************
1966年に「ウルトラマン」【動画】が放送開始されてから、今年で56年。「ゴジラ」【動画】の第29作目に当たる「シン・ゴジラ」【動画】(総合評価:星4.5個)の総監督&脚本を担当した庵野秀明氏と監督&特技監督を担当した樋口真嗣氏のコンビが、今度は樋口氏が監督、そして庵野氏が脚本という形で作り上げた映画「シン・ウルトラマン」。公開が待ち遠しかった此の作品を観に行って来た。
「ウルトラマン」では“怪獣”と表記されていた生物、同じ読みの“禍威獣(かいじゅう)”に変更されている。又、「ウルトラマン」では「国際科学警察機構の下部組織で、通常の警察組織では対処出来ない怪事件や異変の調査、地球を他の惑星の侵略者から防衛するのが主な任務の組織。」を「科学特別捜査隊」、略称「科特隊(かとくたい)」と呼んでいたが、今回の作品で“禍威獣対策の専門家チーム”の略称は、同じ読みの「禍特対(かとくたい)」で、英語での略称は共に「SSSP」と同じなのが心憎い。唯、科特隊の隊員達が作戦出動時に着用する戦闘服はオレンジ色で、臙脂色のネクタイを付けるスタイルだったのに対し、禍特対のメンバーはスーツ姿。(流星バッジは一緒。)
【科学特捜隊】
ウルトラマンがベーターカプセルで変身するスタイルは変わらないものの、造形で言えば胸のカラー・タイマー、そして“背鰭”が無くなっている。「『ウルトラマン』の元々のデザインでは、其れ等が無かった。」というのが理由(カラー・タイマーに関しては、当時、カラー放送という事を意識して、“後付け”された物だし、背鰭は「(着包みの)ウエット・スーツに付いているチャックを隠す為に付けられた物だった。」とか。)の様で、或る意味、“原点”に立ち返った設定と言える。(今回、「ウルトラマンや禍威獣達が、全てCGで描かれている。」事も、背鰭を必要としなくなった理由だろう。)
上記した様に、「ウルトラマンや禍威獣達が、全てCGで描かれている。」事で、見た目の質感や戦闘シーンが半端無く凄い。昭和の「ウルトラ・シリーズ」を見て育った身としては、隔世の感が在る。
「ウルトラ・シリーズ」の第1弾で在る「ウルトラQ」【動画】からはゴメス、マンモスフラワー、ペギラ、ラルゲユウス、パゴラ(「ウルトラQ」の第24話「ゴーガの像」【動画】に、ゴーガという怪獣が登場する。元々は「化石の城」というタイトルで脚本が書かれていたが、其れはNGとなったそうだ。「化石の城」の原型となったサンプル・ストーリー「生きている化石」で、怪獣の名前はカイゲルとされているのだが、今回は同じ」名前のカイゲルという禍威獣が登場。)が、「ウルトラマン」からはザラブ星人、メフィラス星人、ゼットン、そしてゾフィーが登場している。唯々、懐かしい限り。
ウルトラマンの“ぐんぐんカット”【動画】や“手描き風のスペシウム光線”等、“目”で懐かしさを感じる物が結構在るが、「特捜隊のうた」の曲【曲】が流れる等、“耳”でも懐かしさを感じる物が少なく無い。
「ウルトラマン」の第18話「遊星から来た兄弟」【動画】は、印象深い作品の1つ。「ザラブ星人が地球人に対して友好的な振る舞いをする一方で、偽ウルトラマンに化けて、地球人とウルトラマンの仲を裂こうとする。」のだが、「シン・ウルトラマン」では見事に再現されている。
又、「ウルトラマン」の第33話「禁じられた言葉」【動画】はメフィラス星人が登場し、科特隊のフジ・アキコ隊員を“巨人化”(巨大フジ隊員)させる有名なシーンが在るのだけれど、「シン・ウルトラマン」では浅見弘子が矢張りメフィラス星人によって“巨人化”(巨大浅見弘子)される場面が登場。そして「“人間態”のメフィラス星人(山本耕司氏)とウルトラマンの人間態の神永新二が、御互いにブランコに乗っているシーン。」は、「ウルトラセブン」【動画】の第8話「狙われた街」【動画】で「メトロン星人とウルトラセブンの人間態で在るモロボシ・ダンが、卓袱台を挟んで話し合うという、余りにも有名でシュールなシーン。」を思い起こさせる等、“ウルトラ・シリーズに対する作り手の深い愛情”が随所に見受けられる。
ウルトラ兄弟の“長男”という位置付けで知られるゾフィーが、今回の作品では「地球人を滅ぼす為に“光の国”から遣って来て、滅ぼす為の“武器”で在るゼットンを据える。」という設定は、理解出来ないでも無い理由がゾフィーに在るにせよ、非常に衝撃的だった。だからこそ、最後に彼がウルトラマンに言う「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」という言葉は、ズシリと心に響いた。
残念だったのは、登場する禍威獣の選択。昭和のウルトラマンで言えば、登場する怪獣や星人等は、ザックリ分けると、3つに分類される。「バルタン星人やキングジョー等の様に、見た目が斬新なタイプ。」、「ザラブ星人やメフィラス星人の様に、奸智に長けたタイプ。」、そして「ジャミラやウーの様に、人間のエゴや差別意識によって悲しい目に遭った人間が姿を変えたタイプ。」だ。今回の作品では、最後の「人間のエゴや差別意識によって悲しい目に遭った人間が姿を変えたタイプ。」が登場せず、ジャミラが大好きな自分にとっては物足り無さが在った。
・・・と色々書いて来たけれど、総合的に言えば満足行く内容。(幼い子には、一寸判り難い内容かも知れないが。)総合評価は、星4つとする。
来年公開予定の映画「シン・仮面ライダー」【動画】(監督&脚本が庵野氏)が、今から楽しみ。