************************************************
亡くなった町弁のクライアントを引き継ぐ事になってしまった剣持麗子(けんもち れいこ)。都内の大手法律事務所で忙しく働く傍ら、業務の合間(主に深夜)に、一般民事の相談にも乗る羽目になり・・・。
第1話「家守の理由」
不動産屋の主人が、何者かに殺害された。麗子は「武田信玄」と名乗る第一発見者の男に呼び出されるが、男は本名も住所も明かそうとせず・・・。
第2話「手練手管を使う者は」
バーで、ホストの「信長」が殺された。状況からすると、店で寝ていたという「光秀」が怪しいが、彼は無実を訴えて、麗子に助けを求めて来る。
第3話「何を思うか胸のうち」
事務所の先輩弁護士の急死。然し、其の状況は一度倒れてから蘇り、其の後再び亡くなったかの様な奇妙な物だった。
第4話「お月様のいるところ」
認知症を患っているらしい御婆さんを家迄送った麗子は、其処で男の首吊り死体を発見する。然も御婆さんは、警察署から忽然と姿を消し・・・。
第5話「ピースのつなげかた」
三隣亡の日に瓦の張替えを行ったA家の近隣で、不幸が相次いでいると言う。「法律でAさんを訴えられないか?」という相談に、麗子は頭を抱えるが・・・。
************************************************
小説「元彼の遺言状」で第19回(2020年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞した新川帆立さん。自分は此の作品に、総合評価「星2.5個」を付けた。そして、「元彼の遺言状」の続編となる「倒産続きの彼女」には「星3つ」を付けた。両作品共、高い評価を付けなかった訳だ。第3弾となる「剣持麗子のワンナイト推理」は、そんな経緯を経て読む事に。
************************************************
「光秀さんに本当のことを話すよう、説得してはいかがですか?否認していては裁判で罪が重くなりますよ。」。意地悪な言いかただ。そもそも、否認したら刑罰が重くなる現行の仕組みがおかしいので。取り調べの段階から一貫して罪を認めていたら、反省しているとみなされて刑罰が軽くなる傾向がある。他方で、ずっと黙秘していたり、否認したりしていると「反省の情あり。」とみなされない結果、罪を認めている案件より刑罰が重くなる。あっさり罪を認めた真犯人と、本当に身に覚えがないために否認を続けた人では、後者のほうに重い刑罰が科されることがありえるのだ。ふざけた話である。憲法第三十八条第一項には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と書いてある。黙秘権を行使した者を不利益に取り扱ってはならないはずだ。
************************************************
剣持麗子を始めとしたキャラクター設定は悪く無いのだが、肝心の“謎解き”の部分が弱い。「少なくとも“ミステリーを読み漁っている者”を、『そうだったのか!』と驚かす様な物が無い。」気がする。学生時代、法律を専攻していた身なので、法律に関する記述は興味深かったが。
又、ずっと不自然さを感じさせ続けた或る人物の正体が最後の最後で明らかになるのだけれど、何とも後味が悪い。「勝手に『そういう人物では無いだろう。』と淡い期待を持っていたのが災いした。」のだけれど。
今回“も”、期待外れな内容だった。総合評価は、星3つとする。