“地下アイドル”という用語が在る。「マス・メディアへの露出よりも、ライヴ等を中心に活動するアイドル。」を意味するが、ファンの方には申し訳無いけれど、“地下”という用語が付いている事から、どうしても“日陰の身”というイメージは拭えない。
地下は英語で「アンダーグラウンド」だが、1960年代後半に起こった、商業性を否定した文化・芸術運動の事をアンダーグラウンド、略して“アングラ”と表現する様になった。自分が子供の頃は良く使われていた用語だが、最近は耳にする事が無くなった様に思う。
1960年代から1980年代に掛けて、アングラ演劇の旗手の1人として活躍した劇作家、作家、演出家、そして俳優でも在る唐十郎氏。1963年に立ち上げた劇団「シチュエーションの会」(翌年、「状況劇場」と改名。)は麿赤児氏、不破万作氏、大久保鷹氏、四谷シモン氏、吉澤健氏、根津甚八氏、小林薫氏、佐野史郎氏、六平直政氏、菅田俊氏、渡辺いっけい氏等、数多くの有名俳優を輩出したが、後に唐氏の妻となる李麗仙さん(1967年に結婚、1988年に離婚。)は“アングラの女王”と呼ばれ、舞台を中心に活躍した。
そんな李さんが、今月22日に肺炎にて79歳で亡くなっていた事が、昨日明らかに。最近御見掛けしないとは思っていたけれど、2年前に脳梗塞を罹患し、ずっと療養されていたのだとか。
李さんと言えば、“良い意味で”泥臭さを感じさせる女優だった。個性的な演技を見せ、大河ドラマで一番好きな「黄金の日日」【動画】で演じたお仙の役が、個人的には最も印象深い。お仙は「艱難辛苦の末に堺に流れ着いた、情の厚い女性。」という設定で、織田信長を火縄銃で狙撃するも失敗し、後に捕まって、鋸挽きの刑に処された杉谷善住坊(川谷拓三氏)が逃亡中、面倒を見ていた。「生きた儘、首から下を土中に埋められ、通行する者に鋸で首を挽かせる。」のが鋸挽きの刑だが、一気に殺さず、長期間苦しませて殺すのが目的なので、(斬れの良く無い)竹製の鋸を使用。散々首を挽かれ、息も絶え絶えになっている善住坊を哀れに思い、涙を浮かべ乍ら「楽に御成り。」と言った後、一気に鋸を挽いて善住坊を絶命させるお仙の姿は、強烈に印象に残っている【動画】。
在日韓国人2世の両親の間に生まれた李さん。彼女に関する逸話で、今も忘れられない物が在る。在日韓国人という事で、幼少期は日本人の子供から良く虐められていたという彼女。或る日、日本人の子供から「朝鮮人の癖に生意気だ!」と嘲られた際、彼女は「日本人の癖に生意気だ!」と言い返したと言う。彼女の負けん気の強さが感じられる逸話で、凄く好きだ。
合掌。