**********************************************************
2度と後戻り出来ない、絶体絶命の潜入捜査。麻薬取締官の加納良(かのう りょう)が姿を消した。20年振りに故郷に戻った双子の弟・将(しょう)は捜査協力を求められ、兄に成り済まし、単独で凶悪な密売組織に挑む。将を待ち受ける“悪”の正体・・・驚愕、震撼、衝撃の結末。
**********************************************************
大沢在昌氏の小説「悪魔には悪魔を」を読了。或る理由から日本を離れた加納将が、20年振りに帰国。8歳の時に亡くなった両親の墓参りの為だったが、そんな彼の前に1人の男が現れる。麻薬取締官の菅下清志(すがした きよし)と名乗る其の男は、意外な話を将に告げる。双子の兄・良が麻薬取締官として潜入捜査をを行っていたが、3週間程前から連絡が取れなくなったと言うのだ。将が良と最後に会ったのは18年前で、其の時、良は薬科大の学生だった。以降、全く連絡を取り合う事が無かったので、麻薬取締官になった事も全く知らず、戸惑う将。そんな彼に清志は「麻薬取締官か警察官の中に裏切者が居て、良の身の上に何か起こった可能性が在る。見た目がそっくりな将が良に成り済まし、裏切者を炙り出して欲しい。」と依頼する・・・という展開。
全体的に“無理”を感じる設定。「麻薬取締官か警察官の中に裏切者が居る。」という大前提で話は進んで行くのだが、其の根拠が余りにも脆弱だし、何よりも無理さを感じるのが、「将が良に成り済まし、良と非常に密接な関係に在った人物達と接触する。」という点。幾らそっくりな双子とはいえ、学生時代から18年も全く会っていない兄の言動を真似、良(別の名前を使っていたのだが。)と密接な関係に在った人物達と接触し、ばれない様に兄の行方を捜すというのは、現実的に無理が在る。「何者かに襲われ、記憶を一部失っている。」という説明をしている将だが、其れにしても“相手”が「別人ではないか?」と疑わないのが不自然。
肩書を「“ ”」で囲っただけという表記の人物が、最後の最後に登場するけれど、此の人物を登場させた意味合いが、全く判らない。又、「前向きに生き直そう。」と決意する或る人物が、あっさり殺害されてしまったのも、非常に後味の悪さが。
「遣る気、元気、井脇!」の決め台詞で有名だった小母ちゃんを思い起こさせる、強烈なキャラクターの女性警察官が登場する等、キャラ立ちした登場人物は評価出来るものの、全体としては不満足な内容。
総合評価は、星3つとする。