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「<北方領土>引き渡し反対78% 露世論調査」(8月5日、毎日新聞)
ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」は5日、北方領土問題に関する全国世論調査の結果を発表した。北方四島に付いて「引き渡し反対。」とする回答は78%だった。対日強硬姿勢を取ったメドヴェージェフ政権時代の前回2011年調査の90%から12ポイント減った。日露交渉に前向きなプーチン政権の下、世論が軟化した可能性が在る。
調査は今年5月下旬、18歳以上の800人を対象に面談形式で実施された。「引き渡し賛成。」は7%(2011年調査4%)、「判らない。」も15%(同6%)と上昇した。北方領土問題では、最終的には政権の判断に委ねる国民が多数派と見られる。唯、戦後70年以上が経過し、日露の平和条約締結が「重要。」と見る回答者は年々減少。今回は48%と、5割を切った。
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「前回の2011年調査から5年経過し、『北方四島の引き渡し反対。』とする回答が12ポイント減った事から、世論が軟化した可能性が在る。」と元記事では書いているが、果たしてそうだろうか?
12ポイント減ったとはいえ、其れでも8割近くが反対している現実。又、プーチン大統領の強権的政治姿勢を支えているのは、「大国ロシア復活」を熱望する世論で在り、そんな世論が「自国の領土と信じて疑わない北方四島を、日本に引き渡すなんて事を許さない。」と思うのだ。
日露平和条約締結を重要と考える回答者が減少傾向に在るというのも、日本を重要視するロシア人が減少し続けているという事で在り、此の点からも「『北方四島を日本に引き渡す。』という方向には向かわない。」と考える。
引き渡しが在り得るとしたら、日本政府がロシアに莫大な金を渡す等、破格のメリットを与えた場合だが、其れでも4島全てでは無く、一部に限られるだろう。そういうのは、日本にとって決して良い解決策では無い。
「『足元を見られ、破格のメリットを与えなければならなくなる。そして、結果的には一部しか戻って来ない。』では、日本外交の敗北を意味する。」と自分は考える。
大戦では、日本はロシアに対して、際立った加害行為は無いし、版図拡大の戦線において、フロンティアとなったのは、太平洋であり、大陸では満州より南下した中国なので、ロシアの執拗な攻撃は、日露戦争などで、苦渋を舐めさせられた、日本に対する、リベンジでもあるように思います。
過去に囚われるのは愚かだと思いますが、国家間の係争では、戦争をシュミレートして、覇権を目指す国ほど、戦勝に対するこだわりが深いのだと思います。現地の住民や、日本の元住民からすれば、戦勝をいつまでも誇示して、国策としての支配を続ける事は迷惑以外の何物でもありません。国家が介在すると、ロシア人は、与しがたくなる、という、国民性も指摘されますが、日露関係では、その外交ルートが限れられる事から、住民の声や要望よりも、国家が全面に出ているように思います。外交とは相手があってのものなので、仕方のない事だと思いますが、剛腕の再起が待たれるところだと思います。
「国家が介在すると、ロシア人は与し難くなるという国民性。」、此れは確かに在りますね。又、ロシアの専門家が以前語っていたのですが、「アメリカもロシアもNo.1になる事に、異常な程執念を燃やす点は似ているが、アメリカの場合は“プロセス”に評価出来る部分が在れば、仮にNo.1になれなくても、『仕方無い。』と考える。でも、ロシアの場合は、No.1になれなかったら、全てが否定されてしまう。どんな卑怯な手を使ってもNo.1になれば、全て良く評価される。こういった点が、国民性としての差異だと思う。」といった趣旨の発言をしていました。
そういった国民性が、北方領土問題を解決する最大の障害になっている気もします。「どんな理不尽な形で在れ、“自国の領土”と国家が主張している北方四島を、日本に渡すなんて許されない。」という思考が、ロシアに蔓延しているのではないかと。