先日観た映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」は、とても面白かった。山田洋二監督の「家族はつらいよシリーズ」の第3弾だが、同シリーズを見るのは初めて。「機会が在れば、第1弾及び第2弾を見たいな。」と持っていたが、今日、テレヴィで第2弾「家族はつらいよ2」が放送されたので見る事に。
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平田周造(橋爪功氏)と妻の富子(吉行和子さん)との離婚騒動から数年。 周造はマイカーでの気儘な外出を、細やかな楽しみにしていたが、車に凹み傷が目立ち始めた事から、高齢者の危険運転を心配した長男・幸之助(西村まさ彦氏)と其の妻・史枝(夏川結衣さん)は、運転免許を返上させる事を画策する。然し、頑固親父を一体誰が説得するのか!?
嫌な役回りを長女・成子(中嶋朋子さん)、其の夫・泰蔵(9代目・林家正蔵氏)、次男・庄太(妻夫木聡氏)、そして其の妻・憲子(蒼井優さん)に擦り付け合っている内に、周造は意地でも運転を止め様とせず、平田家は又もや不穏な空気に包まれて行く。
そんな或る日、周造は居酒屋の女将・かよ(風吹ジュンさん)とドライヴ中に、故郷・広島の同級生・丸田吟平(小林稔侍氏)と偶然出会す。かよの店で40数年振りに酒を酌み交わした其の夜、周造が丸田を自宅に泊めた事から、平田家には更なる騒動が襲い掛かる事に。何と、翌朝目覚めてみると、丸田が息を引き取っていたのだ。
平穏な住宅街は瞬く間にサイレンとパトランプの喧騒に包まれて、救急隊は来る、警察は来る、そして鰻屋は来るわで、てんやわんやの大騒ぎに。果たして平田家は、再び平穏な日常を取り戻す事が出来るのか?
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第3弾「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」に登場していた小林稔侍氏が、今回の作品にも登場していた。「第3弾では医者の役だったのに、別人の様な設定なのは何で?」と疑問に思い乍ら見ていたのだが、矢張り全く別人という設定だった。第1弾でも又、別人として登場しているらしい。共通するのは、周造の友人という設定。ややこしい。
「危険運転」や「下流老人」、「死」等、高齢者にとって身近なテーマが取り上げられている。此の作品を10代や20代の頃に見ていたら、又違った感想を書いたかもしれないが、「高齢者」という範疇に入るのが其の当時より遥かに近くなった今は、身につまされると言うか、他人事には思えない感じがした。
「家族」というのは時に煩わしくも在るけれど、とても有難くも在る。第3弾を見終えた時に感じた思いを、今回の作品でも感じ、見終えた時には「明日も頑張ろう!」という気持ちになれた。
総合評価は星3.5個。近い内に、第1弾を見たい。
高齢者が、孤独に暮らすというのも、現代的なテーマだと思いました。都会の核家族化によって、家族は限られた世代だけで住まうようになり、その「普通の生き方」から、零落した人々を受け入れるものは、同世代であり、橋爪氏が演じる周造と何の代わりもない、好々爺が、老体をつまして、働き、生きている、という、人生の運の在り方、不平等をも、描いていると思いました。
何かと教訓がある物語だと思います。都会だけでなく、地方の生き方とミックスしても面白いのではないでしょうか。Ⅲになりますが、香港のお土産もお洒落でしたね。山田監督は、シティボーイといいますか、若い感性を大事にされている方だなあ、と思いました。
「家族はつらいよ」シリーズ、3作目、2作目とご覧になったのですね。
当ブログにも書きましたが、1作目は登場人物紹介編的な、私にとっては物足りない出来で、シリーズを重ねるごとにどんどん完成度が高まって行ってます。なので出来れば1作目から順にご覧になった方が良かったと思います。
>小林稔侍氏が、今回の作品にも登場していた。(略)第1弾でも又、別人として登場しているらしい。
小林稔侍氏は、1作目では探偵事務所の探偵役を演じています。おっしゃる通り、毎回違う役ですが、このシリーズ、他にも全シリーズに出演しながら、毎回違う役、という役者が結構大勢います。今回はタクシー運転手だった笑福亭鶴瓶もしかり、本作では田舎の史枝の友人役を演じた広岡由里子さん(顔の長いオバサン)も2作目では小林稔侍扮する丸田老人が住むアパートの管理人役を演じてました。
こういう役者の出し方は山田洋次監督作のお約束みたいなもので、「男はつらいよ」シリーズでは終盤の10作ほどで、笹野高史が毎回違う役で登場してました。私を含む山田洋次ファンはそれが楽しみな所もあります(笑)。
山田洋次作品は、コメディであっても、人生の悲哀、政治の貧困に対する怒り、家族の大切さ、生きる喜び、というテーマが必ず盛り込まれており私が最も尊敬し愛してやまない作家です。機会がありましたら、是非他の作品もご覧になる事をお奨めします。
自分が好きな邦画の1つ「家族」は、1970年に公開された山田洋二監督の作品ですが、公害等、高度経済成長時代の日本が抱える社会問題が取り上げられていました。又、故郷を捨てて北海道に移住する家族が、長女や祖父を失う等の悲しい現実を経て、“希望”を掴んで行くというのも、心を打つストーリー。
仮令娯楽作品で在っても、笑いの中に痛烈な社会風刺を盛り込む。其の匙加減が難しくは在るのですが、山田監督は上手いですね。
笑福亭鶴瓶氏も第3弾と共に今回の第2弾にも登場しておりましたが、第1弾にも登場されているんですね。物語の本筋には無関係なれど、出て来た瞬間に強烈な印象を残している。見事です。
小林稔侍氏という俳優を初めて見たのは、幼少期に夢中になって見ていたドラマ「アイフル大作戦」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%AB%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%88%A6)だったと思います。此の際にはちょい役だったと記憶しているのですが、「アイフル大作戦」の後番組「バーディー大作戦」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%88%A6)では、藤木悠氏演じる追出(おいで)刑事の部下・ 行内(ゆかない)刑事役だったのが印象的。上司が「おいで」で部下が「ゆかない」というふざけたネーミングの通り、コミカルな演技で出ていた彼ですが、今も当時も決して上手さを感じない俳優では在るものの、何とも言えない味が在る俳優でも在ります。
今回の作品で周造が、吟平の死に際して「彼は親から受け継いだ呉服屋を潰したし、妻子から捨てられた。でも、其の事が“寂しい最期”を迎えなければいけない程の事だったのか?一生懸命生きて来た高齢者が、暑い中で交通整理の仕事をし続けなければいけない此の国はおかしいと思う。」といった趣旨の言葉を吐いていましたが、非常に胸を打たれました。
自堕落な生活を送っている人間が苦しい思いをしするのは自業自得と言えましょうが、必死で頑張っている(頑張って来た)人間が報われない社会。其の一方で、政治資金を私的に流用する等、血税で豪勢な生活を送っている連中も居る。何かおかしいです。