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天才的な筋読みから「ヨミヅナ」と呼ばれる警視庁捜査一課、飯綱知也(いづな ともや)。或る女性殺害事件にて、山下貴一(やました きいち)という男が出頭し、DNAも現場の痕跡と一致した事で決着した。
然し、異議を唱えた飯綱は、捜査から外される。宛てがわれた神田の交通事故の捜査は、「バイオ研究所の車から飛び出した少年が、対向車とぶつかったが、再び社用車で連れ去られた。」と言う。
程無く四谷の研究所施設から事故被害者を保護し、轢き逃げ・誘拐事件は一件落着かと思われたが、「ツェット」と呼ばれる少年のDNAが山下と一致し・・・。
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第16回(2017年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞に選ばれた小説「筋読み」(著者:田村和大氏)。田村氏はNHK報道記者を経て、現在は弁護士活動をしているそうだ。
殺人事件で拘留中の男性と、彼が拘留中に轢き逃げ&誘拐された少年のDNAが完全一致した。DNA型鑑定では「或る特定の1つの型を持つ人間は、4兆7千億人に1人しか存在しない。」とされる。世界の人口は約74億7,500万人と推計される(2018年6月3日現在)ので、理論上は「一卵性双生児を除けば、同じDNAを持つ人間は2人と存在しない。」という事になる。其れならば何故、一卵性双生児でも無い2人のDNAが一致したのか?山下は、本当に殺人事件の犯人なのか?ツェットなる少年は、何故誘拐されたのか?幾つもの謎が、「筋読み」の中で解き明かされて行く。
医学的知識が乏しい人間なので、「本当に、こんな事在り得るの?」と思ってしまう記述が幾つか。上記した様に、田村氏は報道記者として働いていたので、其の辺の“裏取り”はきちんとしているのだろうが、内容的に判り難い点が在ったのは事実だ。
トリック的には面白い。でも、上記した様に、流れとして判り難い点が在ったりするので、全体としての面白さは薄められてしまった感じが在る。御都合主義な部分も、正直気になったし。
総合評価は、星2.5個とする。