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女、独身、35歳。25年ローンでマンションを買ったものの、自分が本当に欲しかった物は別だと気付き・・・。
恋に落ちる瞬間のときめき、非日常の浮遊感。此の上無く贅沢に薫る、ラヴ・ストーリーの花束。
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石田衣良氏の「ラブソファに、ひとり」は、9つの短編小説から構成されている。石田作品と言えば“グッと来る比喩”がふんだんに盛り込まれており、其れが最大の魅力。此の「ラブソファに、ひとり」も、グッと来る比喩は健在。
「ハート・オブ・ゴールド」という小説以外は女性が主人公の作品だが、何の主人公も“現状”に漠然とした不安やモヤモヤ感を抱えている。彼女等の「現状を、何とか変えたい。」という焦りの思い等、「男性作家なのに、女性の心理描写が相変わらず上手いな。」と感心してしまう。
「年上の女性の、年下の男性に対する計算尽くの言動。」には、思わずニヤリ。男女が入れ替わったケースでも、こういう計算尽くな言動というのは見受けられるもの。
唯、最近の石田作品で鼻に付くのは、生々しいセックス描写。「恋愛小説を書く上でセックス描写無くしては、リアルな作品と成り得ない。」という事かもしれないし、そういう考えを100%否定はしないけれど、「セックス描写を描いてこそ、素晴らしい恋愛小説になるのだ。」という思い違いが、石田氏の中に在る様な気がしてならない。無理無理にそういった描写を入れ込んでいる感じも在り、「其れはどうかなあ。」と感じてしまう。
「ハート・オブ・ゴールド」という作品は印象に残ったけれど、他の8作品はピンと来なかった。数ヶ月も経てば、すっかり内容を忘れてしまいそうなレヴェル。厳しいかもしれないが、総合評価は星2つ。