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「ランドセル製造の老舗が蕃茄栽培 ICT活用の『植物工場』で」(5月29日、毎日新聞)
ランドセル製造の老舗業者「鞄工房山本」(奈良県橿原市)が、今春から蕃茄栽培に進出し、収穫のピークを迎えている。ICT(情報通信技術)を活用した「植物工場」の為、略年間を通した生産が可能で、収益の柱になればと期待する。畑違いとも言える分野に手を広げたのは、ランドセル・メーカーを襲う危機感だった。
同社は1949年の創業で、現在は年間約1万8,000個のランドセルを販売。東京・銀座や横浜等にも、直営店を構えている。
だが、業界が頭を悩ませるのが少子化だ。厚生労働省によると、2021年の出生数(速報値)は約84万人で、1899年の統計開始以降最少。新型コロナウイルス感染拡大によって、雇用環境が不安定になる等の影響で、此処数年は更に減少率が加速している。
ランドセル業界の先細りが避けられない見通しの中、山本一彦社長は「本業と並ぶ、経営の柱が必要だった。」と振り返る。当初は学習塾の経営等も検討したが、「物作り」という点で共通点が在る野菜栽培に挑戦する事に決めた。
橿原市内に、約1,800㎡のヴィニール・ハウス「藤原京菜園」(同市田中町)を建設。ICTで湿度や温度、二酸化炭素濃度等を自動制御する「植物工場」のシステムを導入し、ノウハウ不足も補った。今春は、蕃茄約1,700株を栽培。二酸化炭素量を多くして光合成を促し、土壌に微生物を活性化させる特殊な酵素を加えて育てる事で、濃厚な味に仕上がった。
菜園責任者でランドセル職人から転身した中村英さん(39歳)は、「販売先で『美味しい。』と直接言って貰えるのが、職人の時との大きな違い。以前から農業がしたかったので、凄く楽しい。」と話す。
「藤原京トマト」と銘打ち、「まほろばキッチン橿原店」(同市常盤町)等、市内外の農産物直売所で販売中。今後は栽培する株数を倍増させ、将来的には苺等にも進出する計画だと言う。藤原京トマトに関する問い合わせは同菜園(050-1748-5809)。
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子供の頃、富士フィルムと言えば、文字通り「写真フィルムのメーカー」だった。だが、カメラのデジタル化が進むと共に、フィルムの需要は落ち込んで行き、2009年1月、写真フィルム部門の売上高は、会社全体の売上高の5%にも満たなくなった。其の結果、2012年9月、同社は長年行って来た映画の上映用ポジ・フィルム及び撮影用のカラー・ネガ・フィルムの生産を中止する事を発表。以前より「写真フィルムに代わる経営の柱作り」を行っていた同社は、今では「化粧品や医薬品のメーカー」といったイメージが強い。
一方、「嘗ては“世界最大の写真用品メーカー”として名を馳せたが、フィル・メーカーで在る事に固執し過ぎた余り、一度は倒産の憂き目に遭ったコダック。」とは、大きく運命を分けた。
少子化の影響で、ランドセル業界の先細りは必須の状況。だからこそ、畑違いのビジネスを始めた鞄工房山本。新しいビジネスが上手く成功する事を、心から祈っている。