有名作家の作品の場合、先ずは「単行本」として刊行し、暫く経った後で「文庫本」として刊行するというのが、出版界の常識だったと思う。“単価”の高い単行本でドカンと利益を上げ、後に単行本に比べると“単価”の安い文庫本で更なる利益を生み出す。出版不況の影響で「単行本→文庫本」への刊行間隔が年々短くなった感は在ったけれど、「単行本→文庫本」というスタイルは守られていた。
しかし此のスタイルも、最早「常識」では無くなるのかもしれない。と言うのも、先月に刊行された宮部みゆきさんの新作「おまえさん(上)&(下)」は、前代未聞の「単行本と文庫本同時発売」という形だったから。
そして更に驚かされたのは、来月に刊行される東野圭吾氏の或る作品。同氏の「白銀ジャック」という作品は新作で在り乍ら、昨年の10月に文庫本として刊行され、「売れっ子作家の新作が、いきなり文庫本で発売!?」と評判になったけれど、何と此の作品が来月には単行本として刊行されるのだとか。「単行本→文庫本」という従来の流れの逆を行く、「文庫本→単行本」という形。「単価が高くても、単行本として欲しい。」というユーザーの要望に応えてという事の様だが、文庫本として既に105万部を突破した作品故、果たしてどういう結果が出るのか興味深い所。