ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「オレたちバブル入行組」

2012年07月18日 | 書籍関連

*********************************

大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢直樹。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。全ての責任を押し付け様と暗躍する支店長。四面楚歌の半沢に残された道は、債権回収しか無いのだが・・・。

*********************************

 

慶應大学卒業後、旧三菱銀行勤務を経て、1998年に小説「果つる底なき」で文壇デビューを果たした池井戸潤氏。昨年には直木賞を受賞(第145回【2011年上半期】する等、脂が乗った作家の1人だ。此れに20冊を超える小説を上梓して来た彼だが、「企業小説」の分野では冴え渡っている。特に自身が嘗て身を置いていた「銀行」を舞台にした小説は、読んでいてぐいぐいと其の世界に引き込まれてしまう。

 

冒頭に記した梗概は、2004年に上梓された彼の小説「オレたちバブル入行組」に付いて。此の小説の中で元銀行マンの池井戸氏は、銀行に関して次の様に記している。

 

*********************************

晴天に傘を差しだし、雨天にとりあげる-まさにその通り。融資の要諦は回収にあり-まったくその通り。カネとは、裕福な者に貸し、貧乏な者には貸さないのが鉄則そういうものである。それこそが銀行融資の根幹だ。

*********************************

 

主人公の半沢直樹は一流大学卒業後、都市銀行の「産業中央銀行」に入行する。彼が同銀行から内定を得た1988年は所謂「バブル期」に在り、就職活動をしている学生達にとっては“売り手市場”だったが、当時は超エリートの象徴と言っても良い銀行部門では、逆に“買い手市場”という状況。

 

一流企業では「就職協定」で決められた「学生の会社訪問解禁日」前に、優秀な人材を囲い込むのが普通だった。特に応募者が殺到していた銀行では、超優秀な人材逸早く囲い込む事に熱を上げていた時代。池井戸氏もそうだが、自分もバブル期に社会に出た人間。だから、此の小説で描かれた世相には、懐かしさを感じたりもする。

 

序章では就職戦線を勝ち抜き、産業中央銀行に入行が決まった半沢、そして同じ大学で矢張り同行に入行が決まった4人が登場。彼等5人の“将来の夢”が紹介されるのだが、各々の夢は異なれども、何れも“希望”に満ち溢れているのは変わらない。

 

しかし、其れから16年が経過した第1章では、彼等の“今”が描かれているのだが、入行前に持っていた将来の夢とは大きく異なっている。望んでいた業務就けなかったというのは未だしも上司からいびり倒されて精神的に病んでしまった近藤の姿には同情を禁じ得ない。そして入行前には一番の出世頭目されていた押木の“今”を知った時、其の“未来に掛ける思いの強さ”をより感じていただけに、何とも言えない哀しさで一杯となってしまった。

 

“社外の悪”のみならず、“社内の悪”とも闘う事になる半沢。「基本は性善説。しかし、遣られたら倍返し。」というのが信条の彼は、どんな相手にも怯む事無く、徹底的に立ち向かって行く。読者の中にはそんな姿を「底意地の悪さ」と捉えてしまう人も居るかもしれないが、自分も含めて“強者”には中々逆らえない宮仕えの人々からすると、半沢の言動にはスカッとした思いを感じるのも事実だろう。

 

「半沢が、銀行で働く事を決めた動機。」、そして「彼が“悪”に対して徹底的に立ち向かって行った背景に、大事な人達を“地獄”に陥れ或る人間への復讐の意味合い“も”在った事が終盤で判明。」等、心を打たれるシーンが少なくない。

 

理不尽な目に遭い、心が折れそうになっている人。」、又、「心が折れてしまった人。」には、特に読んで欲しい作品。総合評価は、星4.5個


コメント    この記事についてブログを書く
« 9年目に突入 | トップ | 全人類の4分の3が所有 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。