ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

“教科書”が無い

2017年12月10日 | 其の他

友人から「面白いドラマだよ。」と勧められ、実際に見たら面白かったので、すっかり嵌まってしまった「やすらぎの郷」【動画】。「平日に予約録画したのを、週末に纏めて見る。」という日々は、此の番組が終わった10月以降も続いている。と言うのも、後番組の「トットちゃん!」【動画】も中々面白いから。

 

「トットちゃん!」は、「黒柳徹子さんが生まれる以前、彼女の両親の出会いから始まり、戦中戦後苦難の年月を経て、稀代スターが誕生する過程を描いたドラマ。」だ。黒柳さんと言えば、「1953年1月に“テレヴィジョン女優”の第1号の1人として、NHK入局した。」事でも有名。“我が国初のテレヴィ本放送”は翌年から始まる訳で、黒柳さんは黎明期から今に到るテレヴィ放送を、間近で見続けて来た人物。そんな彼女の目を通してテレヴィ放送史、そして昭和芸能史が描かれている。

 

森繁久彌氏や沢村貞子さん、渥美清氏、野際陽子さん等々、今は亡き有名人(に扮した人)が次々に登場するのも懐かしくて良いが、テレヴィ放送黎明期の様子が描かれているのは興味深い。「放送テープが非常に高価だった事から、番組は収録で無く、生放送が普通だった。」等、当時の様子は本等で或る程度知っていたけれど、考えられない様な失敗が多発する一方、作り手や出演者達が必死で取り組んでいる“熱さ”を改めて感じる。何しろテレヴィ放送に関しては“教科書”が存在しないのだから、皆、手探り状態で様々な取り組みをしていたのだ。

 

昨日、「手塚治虫ファン大会2017」という催しに参加して来た。幾つかコーナーが設けられており、其の1つにミステリー作家二階堂黎人氏と、アニメ特撮脚本家で在り、ミステリー作家でも在る辻真先氏との対談が在った。

 

二階堂氏は、「手塚治虫ファンクラブ」の初代会長としても有名な方。そして、辻氏は数多くのミステリー作品を生み出している事でも有名だが、NHKに入局し、黎明期のテレヴィ放送を支え続けて来た事は、より有名だろう。此方脚本を担当されたアニメ&特撮番組名が列挙されているけれど、凄いラインナップ

 

「凄い。」と言えば、辻氏の矍鑠さ。今年85歳になられたそうだが、声は張りが在るし、何よりも記憶力が抜群。人名や時期を言い澱む事無く、すらすらと話されていたのが印象的。

 

で、テレヴィ放送黎明期という事も在り、彼は“本業”以外の様々な事をさせられて来たそうだ。演出や脚本だけでは無く、セット作りの様な裏方作業も行っていた様で、今となってはそういう経験が自身の血肉になっていると。

 

彼が初めて関わった手塚作品は、1961年から1962年に掛けてNHKで放送された「ふしぎな少年」での演出。「時間を自由に止めたり、動かしたり出来る“サブタン”が、其の超能力を使って活躍する物語。」なのだが、此の番組制作をNHKの上層部に認めさせるのが、とても大変だったと言う。

 

今ならば「四次元世界」や「タイムスリップ」、「タイムストップ」なんて用語を使っても、多くの人はすっと理解出来るけれど、1960年代初めでは、相当SFに詳しい人で無い限り「どういう意味?」という時代で、其れはNHKの上層部も例外では無かった。詳しく説明しても、「そんなの、視聴者は理解出来ないよ。」とけんもほろろだったそうだ。当時の我が国では、「SF」という概念がそんなに広まっておらず、言ってみれば“SFに関する教科書”が無かった時代。

 

其処で辻氏は、海外の有名な映画監督(名前を失念してしまった。)の或る作品を、彼等に示した。「郵便受けに、手紙が投函される。→其の手紙は、郵便受けに落ちる前に空中で静止。→周りの人間等が全て動きを止めている中、1人の人物だけは動いている。→暫くすると、空中に静止していた手紙が郵便受けの中に落ち、皆は動き出す。」といったシーンを見せ、「こういう状態を、『タイムストップ』って言うんです。」と説明した所、状態を理解した以前に、“有名な〇〇監督が使っている手法”を用いる番組ならば、制作してもOK。という事に。権威に弱いNHKらしい逸話だが、以降、辻氏は「有名な〇〇が使っている手法。」といった口説き文句を使う事で、“教科書の無い事柄”に躊躇する人達を説き伏せて行ったとか。

 

「判らない事だらけだったので大変だったけれど、とても面白かった。」と語った辻氏。作り手や出演者達が必死で取り組んでいる“熱さ”が在った時代だからこそだろう。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2017-12-10 11:00:13
NHK上層部を説き伏せたという逸話、先日別の記事へのコメントで書きましたが、友人との議論で最後に「この本に書いてある」の一言で納得させたことと同じ状況に、思わずにやりとしてしまいました。
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>悠々遊様 (giants-55)
2017-12-10 11:09:13
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

父や嘗ての上司が良く言っていたのですが、「人を説得し様と思ったら、抽象的な説明では駄目。具体的な数字を挙げての説得じゃないと、人は説得出来ない。」と。今でも自分が肝に銘じている言葉です。

又、自分の中に確固たる考えが無い人って、概して“権威”に縋る傾向在りますね。先日、悠々遊様が書かれた「此の本に書いてある。」もそうですが。
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