ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「最後の証人」

2010年09月09日 | 書籍関連
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検察官の佐方貞人は、刑事事件を専門に扱う遣り手弁護士だ。そんな佐方のに、嘗て在籍した地検の所在地で起きた殺人事件の弁護依頼が舞い込む。高層ホテルの一室で起きた刺殺事件。物的証拠、状況証拠共に、依頼人が犯人で在る事を示していた。男女間の愛憎縺れが引き起こした悲劇。世間やマスコミの誰もが、依頼人に勝ち目は無いと見ていた。しかし佐方の、本筋を見抜くプロの勘は、此れは単純な事件では無いと告げていた。敗戦必至の弁護を引き受けた佐方に、果たして勝算は在るのか。やがて裁判は、誰もが予想しなかった驚くべき展開を見せる。
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第7回(2008年)「『このミステリーがすごい!』大賞」を、「臨床真理」で受賞した柚月裕子さん。彼女が2作目として世に送り出したのが、冒頭梗概を記した「最後の証人」だ。“一般的に言えば”、此の作品には2つのどんでん返しが在る。ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、1つは「被告人」に関して。恐らく読者の多くは或る時点、“或る捉え違い”をする事になるだろう。著者が被告人に関する描写を意図的に抑え、読者を「ミスリードの世界」に誘わせたと言って良い。自分もまんまと引っ掛かってしまったし、此の点に関しては御見事。

そしてもう1つは「犯行自体」に付いてなのだが、こちらは必ずしも見事にどんでん返しが決まったとは言い難い上記『被告人に関するどんでん返し』が明らかとなった時点で、『犯行自体のどんでん返しの内容』を読めてしまった読者が結構居たのではないか?と思うから。

処女作「臨床真理」に付いて自分は以前、「大映ドラマチックさを感じる作品」と記した。此の作品にも、そういった匂いが感じられる。ストーリー運びや人物描写は悪くないのだが、如何せん気になるのはリアルさが感じられない。という点。小説なのだから或る程度の御都合主義看過するにしても、法律的な部分で「こんな事は現実的に無いでしょ?」と疑問を感じてしまう点が幾つか在ったのは戴けなかった。エンディングが良かっただけに、そういった粗さが実に勿体無い

タイトルに在る様に、最後の最後に登場する「証人」が裁判に大きな影響を与える。其の証人に付いて自分は「過去の或る事件の目撃者」を予想していたのだが、此れは外れてしまった。「“彼”が先ずは証人として登場し、『過去の或る事件』の存在を明らかにする。そして“最後の証人”が登場して、『過去の或る事件』の真実を明かす。」とした方が、もっとストーリーに深みが出たのではないかという気が、個人的にはしている。

粗さが目立つものの、ストーリーとしては面白い。総合評価は星3つ

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