東京新聞の読者投稿欄「発言」を読んでいると、「世の中には、色んな考えの人が居るんだなあ。」と改めて思わされる事が多い。或る人が非難している事柄も、別の人からすると好意的に捉えているケースも在る。全く同じ事柄なのに、受け手の捉え方は千差万別なのだ。
10月13日付け(朝刊)の「発言」を読んでいた所、70歳の男性の投稿が強く印象に残った。実名は控えさせて貰うが、内容は次の通り。
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「白髪老人が20歳以下?」
私は当年70歳で、頭は全面真っ白です。煙草を買いにコンヴィニに立ち寄りました。
煙草の銘柄を言って、買う意思表示をしました。店員は「ハイ。」と返事して、其の煙草をカウンターに置き、「画面タッチを御願いします。」と言うので、ディスプレイを見たら画面に「20歳以上」という表示が在りました。どうも、私に対し20歳以上で在る事の確認を画面タッチで求めている様です。
私は、馬鹿にされている様な気がして、煙草を買うのを止めました。白髪の老人に「20歳以上ですか?」と画面タッチをさせる前に、自分の頭で考えて欲しいなぁ~。
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何故、此の投稿が強く印象に残ったかと言えば、似た様な場面を見掛けた事が在るし、自分自身も似た様な経験をした事が在ったので。見掛けたのは矢張りコンヴィニで、見るからに50代以上のおっさんが煙草を購入していたのだが、同様に店員から年齢確認の画面タッチを求められていた。其のおっさんは無表情に画面タッチしていたが、傍から見ていた自分は「どう見ても良い年をしたおっさんに、年齢確認させるというのも、何かコントみたいだな。」と、“腹の中”で笑ってしまったもの。
そして自分が経験したのは、ドラッグストアで総額数百円の買い物をした際、小銭が無かったのでカード払いを口にした際、店員から「一括払いで宜しいですか?」と尋ねられた事。「他にカード払いにした総額が結構在り、リヴォルヴィング払いにしたい客も居るだろうし、マニュアルで決まっている通りに言わざるを得ないのだろうな。」という思い、そして他の“或る思い”から、「まあ仕方無い。」と感じつつも、「数百円程度で、『一括払いで宜しいですか?』も無いよなあ。」と苦笑してしまった。こういった経験は、何度かしている。
「気持ちは判らないでも無いけれど、此の程度の事で『馬鹿にされている。』と感じた挙句、(カウンター迄持って行った)煙草の購入を止めるというのは、一寸大人気無いなあ。」と思ったのだが、此の投稿に関して読者から少なからずの反響が在った様だ。18日付け(朝刊)の「発言」で、賛否の意見が紹介されていた。
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「70歳の方が、煙草をコンヴィニで買う際に、20歳以上の確認画面にタッチする様求められた馬鹿馬鹿しさを指摘しておられたが、正に同感。マニュアルに従う事を判断より優先させた行為の結果で、改めるべきだ。」(65歳)
「私は73歳、此の文を読んで違和感を覚えた。バーコードを読み取っている位は知っているでしょう。煙草・酒を読み取れば、機械的に『20歳以上ですか?』と出る仕組み。私もカップ酒を買うが、疑問に思った事は無い。」(73歳)
「店員さんにしてみれば判り切った事でも、店の決まりに従って一生懸命です。私は慣れました。もう少し広い了見を持っては。」(72歳)
「御客から認証を戴かないと、レジ機能が進まない様に出来ている。微妙な年齢の方に再確認を御願いし、トラブルになる事も頻繁で、認証を信じ未成年者に売ってしまい、逮捕された従業員の例も何件か在る。此の遣り方は形だけ取り繕った物で、間違い。末端の販売員に責任を押し付けるのを止め、購入時に身分証提示を義務付ける法制化をすべきです。」(52歳)
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「~は正しくて、~は誤り。」という“答え”が在る訳では無いけれど、最後に紹介した52歳の販売員の方の意見には、説得力を感じた。
個人的な意見を書かせて貰うならば、「店員が誰に対しても年齢確認の画面タッチを求めるのは、止むを得ない。」と思っている。レジ機能や法律等、現状で極力トラブルを避けるには、こういう形がベターと考えるので。
加えて言うならば、自身の経験の所で記した「或る思い」というのも影響している。以前の記事「『アビエイター』 ~全ての夢を掴んだ男~」の最後にチラッと書いた話だが、「一緒に歩いていた時に『ゴホゴホ。』と咳き込んだ上司に、『風邪ですか?』と尋ねた所、『誰が風邪なんて言った!』と切れられた。」事が在る。「偏屈で気分屋。」という事で有名な上司では在ったが、普通に「風邪ですか?」と聞いただけで、あんなに切れられるというのは驚いたもの。
事程然様に、「善意からの言動で在っても、悪意の様にしか受け取れない人。」というのも世の中には存在する。「此の御客は、どう考えても20歳以上。だったら敢えて年齢確認の画面タッチをして貰うのも失礼だから、自分が代行しよう。」と思ってタッチした店員に対し、「タッチするのは、客で在る自分の権利だろ!何故、勝手にタッチした!!」なんぞと、切れる客が居ないとも限らない。
この白髪のじいさんや、某役者のように年齢確認を求められて怒る人は、ある意味ヒューマンな人ですね。人を人と思える人ではないでしょうか。
これがコンビニの店員が人間ではなく、ロボットのごとき機械だったら彼らは怒らないでしょう。
店員を人間と認めているのですね。
コンビニの店員なんて、コンビニに装備された「装置」だと思う人よりはいいのではないですか。
コンヴィニでの年齢確認の件、偶然では在りますが、俳優の梅沢富美男氏も激昂されているんですね。
http://www.j-cast.com/2012/10/14149971.html?p=all
で、雫石様の書き込み、切り口が凄く面白いなあと思いました。確かに、相手を「人間」と認識しているからこそ、憤りを感じるというのは在りますね。音声で指示する「機械」ならば、腹が立つという事は無いだろうし。
カード払いをする際、人間が「一括払いで良いですか?」と逐一尋ねるからこそ違和感を覚える訳で、機械が・・・と考えると不自然では無いとも言えます。(レジの人間が機械と一緒と馬鹿にしている訳では無く、飽く迄も物の考え方という意味でですが。)
鉄腕アトムの様なロボットが誕生すれば話は別ですが、基本的に機械は人間の心の揺れ動きを、人間の様に判断出来ない。だから機械が“流れ作業”として行う事に、逐一腹を立ててしまうというのは、精神衛生上決して良い事では無いでしょう。
ネット上を中心に、尤もらしいエクスキューズを述べつつも、実際には他者を“いたぶりたい”だけの人が、近年は非常に目に付きます。徒党を組んでしかストレスを発散出来ない人というのは、自分を客観的に見れない人なんでしょうね。