台風15号が千葉県千葉市に上陸したのは、今月9日の5時前だった。想定を超える強風が吹き荒れた事から、千葉県では鉄塔2基が倒壊し、推定約千本の電柱が損傷。此の事により、上陸した9日朝の段階で約63万7千戸、8日後の17日時点で約10万2千6百戸、そして14日後の23日の時点で約5千7百戸が停電していたと言う。27日以降も百戸以上で復旧作業が続く見込みとの事で、台風上陸から18日が過ぎたというのに、停電の完全復旧は成されていない。
今回の被害を受け、「電線類地中化を進めた方が良い。」という声が上がっている訳だが、こんなにも停電が長期化している“別の理由”に付いて、27日付け東京新聞(朝刊)が取り上げていた。「各地で倒木が発生し、復旧に向かう車両等の進入が阻まれ、送電設備の損害状況を正確に把握するのも困難になった。」事も大きな理由で、では「何故、そんなにも多くの倒木が発生してしまったか?」というのを考えると、「山林の手入れが行き届いていない。」事が挙げられると言う。「林業の衰退により、山林其の物の脆弱化が進んでいる。」と。
林野庁によると、「日本は国土の7割に当たる約2千5百万ヘクタールを森林が占め、フィンランドやスウェーデン等と並ぶ、世界に冠たる“森林大国”。」なのだとか。高度経済成長期の1960年代、木材の供給不足を補うべく、日本は木材輸入の拡大に踏み切った。其の結果、海外から価格の安い輸入材がどっと入り込んだ(現在は、利用木材の約7割を輸入材に頼っている。)事から、国産材が売れなくなり、林業に従事する人がどんどん減り、日本の林業は衰退の一途を辿る事に。「1980年、日本の林業従事者は約14万6千人存在したが、35年後の2015年時点では、3分の1強の約4万5千人に迄激減。65歳以上の割合は『約25%』と、全産業平均の『約13%』の略2倍。」という状況。
森林の面積は50年前から略変わらないのだが、木の幹の体積を示す「森林蓄積」は年々増え、此の間で約2.7倍にもなったそうだ。(木材として使う目的で植えた人工林の森林蓄積は約6倍。)きちんと間伐する等、人が手を入れた森林は風雨に強いが、怠ると保水力が落ち、倒木し易くなると言う。「毎年伐採されるのは、全体からすれば一部に過ぎない。」という現状では、今回の様な大量の倒木というのが、再び発生する可能性も。
以前、ドキュメンタリー番組で取り上げていたが、「林業従事者を増やす。」という取り組みをしている地方自治体が無い訳では無いけれど、国を挙げて組織だった対策を打たないと、山林の脆弱化というのは進む一方だろう。