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東名高速道路「裾野バス停」付近で、男性の他殺死体が発見された。被害者・須藤勲(すどう いさお)は41年前、5歳の息子・尾畑守(おばた まもる)を誘拐されており、約1ヶ月後に遺体となって発見されたが、事件は未解決の儘だった。
静岡県警の日下悟(くさか さとる)刑事は、須藤の死と誘拐事件に関連性が在ると捜査を開始する。尾畑守君誘拐事件に付いては、時効直前の昭和63年夏、県警の威信を懸けて再捜査が行われていた。日下は再捜査の指揮を執った当時の管理官・重藤成一郎(しげとう せいいちろう)元警視に面会を求める。
41年前、静岡県で起きた幼児誘拐事件。26年前に時効成立した事件が、今、再び動き出す。2度敗北した静岡県警に、3度目の機会は無い筈だった。
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翔田寛氏の小説「真犯人」は、3つの時代を舞台としている。「平成27年」、「昭和63年」、そして「昭和49年」だ。平成27年に他殺死体で見付かった男の捜査を始めた所、其の男の息子が41年前の昭和49年に誘拐&殺害されていた事が判明。そして其の事件の時効が1年後に迫った昭和63年、再捜査が開始されていて、どうやら全てが今回の殺人事件にリンクしている様なのだ。
3代続けて警察官という家族を描いたミステリー「警官の血」は、“時空を超えた壮大な作品”だったが、規模は違うにしても似た雰囲気が「真犯人」には在る。
「全く関係性が無いと思われた人物や出来事が、展開が進んで行く内に、意外な関係性を持っていた事が明らかとなる。」というのはミステリーの醍醐味だけれど、「真犯人」は“現実的な設定”の上に成り立ち、尚且つ意外性に溢れた作品。
翔田作品では「誘拐児」及び「祖国なき忠誠」も傑作だったが、今回の「真犯人」も高い評価が出来る内容。総合評価は、星4.5個とする。