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義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵(あきもと ゆうぞう)の下には、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んで来る。今度は「公演間近のオーケストラの内紛を、何とか収めて欲しい。」という依頼が。
ヤクザという事がばれない様に、コンサルティング会社の社員を装う代貸の日村誠司(ひむら せいじ)。慣れないネクタイを絞めるだけでもうんざりなのに、楽団員同士のいざこざが頻発する。
そんな中、指揮者が襲撃される事件が発生。警視庁捜査1課から、彼の名(?)刑事が遣って来て・・・。
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警察小説の名手として知られる今野敏氏だが、他の分野の小説も手掛けている。「昔気質のヤクザの親分・阿岐本雄蔵率いる阿岐本組の面々が、“すっかり傾いて廃業寸前の組織”を立て直す。」という「任侠シリーズ」もそんな1つで、彼等は此れ迄に出版社、私立高校、病院、銭湯、そして映画館を再建、今回読んだ第6弾「任侠楽団」では、再建という訳では無いのだが、「“分裂状態”に在るオーケストラの内紛を納める。」のがミッション。
親分の阿岐本雄蔵を始めとして、阿岐本組の面々は個性派揃い。そんな連中の中に在って、代貸の日村は気苦労が絶えない。ヤクザの世界とはいえ、“中間管理職としてのストレス”が読み手に伝わって来て、感情移入してしまう部分が在ったりする。
ヤクザの親分だが、“インテリヤクザ”の雰囲気を持つ阿岐本の“意外な過去”が明らかとなる。又、警視庁捜査一課から遣って来た風変わりな刑事と阿岐本達との遣り取りも面白い。
だが、非常に残念なのは「オーケストラの内紛の原因(仕掛け人)及び襲撃事件の犯人、そして其れ等の動機。」が、凡そ読めてしまう事。“謎解き”という面では物足りない。
総合評価は、星3つとする。