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休暇を利用し、88ヶ所を巡拝する四国遍路に出た玉村誠(たまむら まこと)警部補。然し、何故か同行して来た警察庁の加納達也(かのう たつや)警視正と、行く先々で出会す不可解な事件に振り回され・・・。
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文壇デビュー作「チーム・バチスタの栄光」で、人気作家の仲間入りを果たした海堂尊氏。此の作品は後に「田口・白鳥シリーズ」と呼ばれる様になるシリーズの第1弾ともなった訳だが、同シリーズには個性的なキャラクターが数多登場する。「長身でイケメンだけれど、エキセントリックな言動が目立つ加納達也警視正。」と「小柄で真面目、“上司”の加納警視正に顎で使われ、振り回される玉村誠警部補。」との凸凹コンビも、そんなキャラクターだ。
四国別格20霊場を巡拝されている(まめ)たぬき様とは異なり、実に不信心な自分。巡拝されている(まめ)たぬき様を「偉いなあ。」と感心する許りで、「自分の巡拝し様。」という気力は無い。本当に駄目人間だ。
「四国88ヶ所」の霊場を空海が開創したのは815年と伝えられており、3年前の2015年は「開創1200年」に当たった。「そんな記念すべき年、『88ヶ所を巡拝し様。』と思い立った玉村警部補は、休暇を利用して四国に赴くが、何故か上司の加納警視も同行。実は、彼には或るミッションが与えられていたのだった。」というのが、今回読んだ小説「玉村警部補の巡礼」で、5つの短編小説から構成されている。
四国88ヶ所に関する情報が色々盛り込まれており、詳しくない自分には勉強になる内容だったが、肝心のストーリー的は今一つ。幾つか伏線は敷かれており、其れなりの回収はされているのだが、“御都合主義”な面も否めなかったりするからだ。
又、「チーム・バチスタの栄光」の頃は目新しく感じた“人物に対する過剰な比喩”も、或る時期からは鼻に付く様になった事も、ストーリーに深く集中出来なくなった要因。
中でも面白かったのは「土佐 修行のハーフ・ムーン」。ネタバレになってしまうが、「月」をストーリーの“核”にしており、興味深かった。
海堂氏の高い筆力を考えると、全体的にパッとしない。総合評価は星3つ。