ロシアの文豪「フョードル・ドストエフスキー」の作品で、多くが真っ先に思い浮かべるのは「罪と罰」ではないだろうか。此の作品に関しては「実際に読んだ人」、又は「読んでいなくても内容は知っているという人」は結構居るだろうけれど、同じく彼の作品で在る「カラマーゾフの兄弟」の場合は、「作品名は知っているが、内容は知らない。」という人が多そうな気がする。斯く言う自分も、作品名しか知らない。
「カラマーゾフの兄弟」はドストエフスキーの最後の長編小説にして、「『罪と罰』と並ぶ、ドストエフスキーの最高傑作。」と称されている。「3兄弟の親子・兄弟・異性等、複雑な人間関係が絡む中、父親殺しの嫌疑を掛けられた子の刑事裁判に付いて、3兄弟が各々の立場で向き合って行く。」というのがメイン・ストーリーで、其の他に「信仰や死」、「国家と教会」、「貧困」、「児童虐待」というテーマも盛り込まれているとか。
そんな世界文学の金字塔を元にし、不可解にして未解決事件でも在る「父殺し」の13年後を描いた作品が、高野史緒さんの「カラマーゾフの妹」だ。1995年に作家デビューした彼女は、昨年刊行された此の作品で「第58回江戸川乱歩賞」を受賞すると共に、ミステリーのブック・ランキングでも軒並み高い評価を受けた。(「2012週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では第3位、「このミステリーがすごい!2013年版【国内編】」では第7位。)
外国人の名前が多く登場する作品は、非常に苦手。唯でさえ「人名」を覚えるのが苦手というのに、「片仮名で記された人名」は非常に混同し易く、其れ等を覚えるというのは苦痛以外の何物でも無い。此の「カラマーゾフの妹」に登場するのは全てロシア人で在り、当然全てが片仮名で記された人名。加えて「正規の名前」以外にも、「愛称」が使われたりと、非常にややこしい。「ドミートリー・カラマーゾフ」という正規の名前が記されていたと思いきや、「ミーチャ」という愛称が記されていたりといった具合にで、何度冒頭の「主な登場人物」なる頁を見返した事か。そういった事も、此の小説に没頭出来なかった要因の1つ。
「カラマーゾフの兄弟」に対する高野さんの思い入れの深さは、十二分に伝わって来る。「ミステリー」とも称される此の作品を、恐らくは何度も読み返し、自分形の解釈で「真犯人」を焙り出した努力も買う。しかし、如何せんストーリー展開がかったるく、自分には面白味が感じ得なかった。石田衣良氏、京極夏彦氏、桐野夏生さん、今野敏氏、そして東野圭吾氏という、今を時めく人気作家達が江戸川乱歩賞の選考委員を務めているが、彼等が揃って此の作品を絶賛している理由が、自分には理解出来ない。
総合評価は、星2つ。