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AIによる監視システムが強化された日本。指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事・月沢克司(つきざわ かつし)が殺された。「私形に推理する。其の気が在るなら、付いて来て。」。不思議な女性・羽原円華(うはら まどか)に導かれ、父を亡くした少年・陸真(りくま)の冒険が始まる。
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20年前の記事「賞に縁遠い男“東野圭吾”」で書いた様に、自分は小説家・東野圭吾氏の古くからの大ファンだ。今や多くの人が知る存在となったが、彼の知名度が高くなかった時代からの大ファンなので、一寸自慢だったりする。
そんな東野氏の著作100作目として昨年3月に上梓されたのが、今回読んだ「魔女と暮らした七日間」。必ず購入する東野作品は「手元に在るので、何時でも好きな時に読める。」という思いが在り、(返却しなければならない)図書館で借りた他の作品を優先して読み漁っている事から、大好きな小説家の作品なのに、こんなにも読むのが遅くなってしまった次第。
「魔女と暮らした七日間」は、「ラプラスの魔女シリーズ」の第2弾。第1弾の「ラプラスの魔女」(総合評価:星3つ)では、不思議な力を持つ女性・羽原円華が主人公だったけれど、今回の「魔女と暮らした七日間」は、父を殺害された少年・月沢陸真が主人公と言って良い。母親を6歳の時に病気で亡くして以降、刑事の父と2人きりで生活して来た中学3年生の彼。そんな彼が円華、そして大親友の宮前純也(みやまえ じゅんや)と父を殺害した犯人を捜す・・・というストーリー。
“凸凹コンビ”といった感じの陸真と純也の関係性が凄く良い。心の底から陸真を心配し、「何とか助けになりたい。」と寄り添う純也。又、彼の家族達も同様で、読んでいてホンワカとした気持ちになる。「自分も、陸真と同年代で父を(病気で)亡くしている。」という共通点が、どうしてもどっぷりと感情移入させてしまうのだろう。
真犯人捜しの過程で、少年達は“大人の世界”を冒険する事になる。大好きな映画「スタンド・バイ・ミー」の世界観がオーヴァーラップしてしまった。
「DNAを利用した捜査手法」に付いては、昔から懸念が呈されてもいた。「犯人を捕まえるのに役立つ。」というのは大きなメリットだが、「無辜の人達の個人情報すらも、不当に官憲に握られているのではないか?」という懸念は、ずっと指摘され続けている。真相は闇の中だが、此の作品の中で描かれている事柄にはリアリティーを感じてしまう。
真犯人の察しは割合早く付いたけれど、(真犯人とは別の)“彼”の“今の姿”には驚かされた。「そう来たか!」という感じだ。
円華との“別れ”も「少年時代からの卒業」といった感じで、「スタンド・バイ・ミー」の“エンディング”を思い起こさせる。少年時代を卒業した陸真と純也の未来を、作品として読んでみたい。
総合評価は、星3つとする。