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・家庭教師の派遣サーヴィス業に従事する大学生が、と或る家族の異変に気が付いて・・・。(「惨者面談」)
・不妊に悩む夫婦が、漸く授かった我が子。然し、其処へ「貴方の精子提供によって生まれた子供です。」と名乗る別の“娘”が現れた事から、予想外の真実が明らかになる。(「パンドラ」)
・子供が4人しか居ない島で、僕等はiPhoneを手に入れ、「ゆーちゅーばー」になる事にした。でも、或る事件を境に、島の人々がやけに余所余所しくなって行って・・・。(「#拡散希望」)
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幾つかの書評で高い評価を得ている小説「#真相をお話しします」(著者:結城真一郎氏)を読んだ。書店を訪れる度、「一度見たら忘れられない、印象的な表紙のイラスト。」が気になっていた作品だ。結城真一郎氏の事は全く知らなかったのだが、東京大学法学部を卒業した彼は、大学の同級生だった辻堂ゆめさんが先に文壇デビューした事に触発され、作家の道を目指したのだとか。
「#真相をお話しします」は、5つの短編小説で構成されている。中でも「ヤリモク」、「三角奸計」、そして「#拡散希望」の3つは“大昔”、具体的に言ってしまうと“インターネット普及前”には考えられなかった状況をテーマとしており、“新しさ”を感じる。
「惨者面談」は「結末が読める。」と早い段階で思ったけれど、意外などんでん返しが待っていた。「成る程、“彼の記述は、此の結末の為の伏線だったのか。」という“遣られた感”が。でも、「ヤリモク」と「三角奸計」の2つに関しては、予想した形と略同じの結末で、意外性は全く無かった。
最後の「#拡散希望」は、取り分け“今風の作品”だと思う。一部ネタバレになってしまうかも知れないが、YouTuberをテーマにした作品だからだ。常識を弁えたYouTuberも居るが、所謂“炎上系”と呼ばれる「アクセス数を稼ぐ為には、法やモラルに反した事でも平然と行う馬鹿なYouTuber。」も少なく無い現実。そういう連中には辟易とした思いが在るけれど、現実問題として馬鹿なYouTuber“も”存在している以上、「#拡散希望」の様な世界は「在り得なくは無い。」と思ってしまうのが不気味な所。
「パンドラ」という作品が顕著だけれど、“種明かし”に回りくどさを感じる所も在る。もっとすっきりした、端的な記述で在れば、読み進め易いのだが・・・。
総合評価は、星3.5個とする。