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原木栽培:天然の木を用いて、木材腐朽菌の茸を栽培する方法で、伐採し枯れた丸太に、直接種菌を植え付ける。椎茸を栽培する際に用いる原木を、「榾木」と呼ぶ。
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週刊新潮(3月24日花見月増大号)に、「あら不思議 椎茸は原木叩くと収穫2倍に!?」という記事が載っていた。
大分県は「干し椎茸王国」で、生産量は日本の約4割、全国1位を誇る。其の大分県の県立農林水産研究指導センターが、「榾木に散水し、ハンマーで一定回数叩くと、収穫数が倍増する。」という研究結果を発表したと言う。
「椎茸生産者より、『2年目を迎えた榾木からの椎茸発生量が悪い。』と相談された。」事が、同センターによる今回の研究の切っ掛けだった。2~4月に収穫される「低温性品種」で、2017年度から実験を開始。
最初に行ったのは、「天地返し」という方法。「原木の天地を引っ繰り返すと、翌年は椎茸が多く発生する。」というのは昔から言われていたが、高齢の生産者にとっては骨が折れる作業という事で、最近は行われなくなっていたと言う。だが、長さ1m、直径10cm程の原木を逆さにしてみるも効果無し。
其処で翌年度は、原木の木口(切り口)や樹皮を3回叩く方法を試す事に。「雷が落ちるとか、冷水に浸けるとか、原木に刺激を与えると、椎茸の発生量が良くなる。」というのも昔から伝わる方法だったが、中でも手間もコストも掛からない方法が「打木」と考えられたからだ。
然し、当初は中々上手く行かなかった。2019年度は木口3回に加え、原木胴部の樹皮も上から下迄均等に5回、此れを手前と左右、背後の4面、合計20回叩く方法で試した所、収穫量は約5倍になったものの、椎茸1つ1つのサイズが小さく、御互いに重なって変形してしまう欠点が。又、生産者の高齢化が進み、合計20回の打木は体力的な面でもネックに。
其処で一昨年は、樹皮の手前と背後を5回ずつ、合計10回叩く事にした所、打木無しの場合と比べて約2倍の収穫量になったそうだ。「椎茸の質も許容範囲で、年数が限られた試験の中で、此れがベターな結論かなと考えています。」と、同センターの研究員は語っている。
「詳細なメカニズムは不明。」との事だが、同デンターでは此の方法を生産者に指導している。唯、「低温性品種に関しては今季、九州地方で殆ど雨が降らず、然も気温も低すぎた所為で、栽培に適した状態になっていない。従って『今年は叩いても無駄だろう。』というのが、今季に関する私達の感覚です。」と同センターの研究員は語っており、自然相手の栽培の難しさを痛感させられる。