今から30年以上前、偶然手にした一冊の漫画。中国の歴史小説を題材とし、横山光輝氏が手掛けたその作品に、自分はすっかり魅せられたしまった。後漢末期から三国時代にかけての群雄割拠の時代を描いた「三国志」で在る。それ以降、全60巻を買い揃えるに到り、これ迄に何度読み返した事か。三国志関連の書籍もかなり読み漁り、小説だけでも何種類か読んでいる。蜀のシンパで、何よりも天才軍師・諸葛亮孔明が好きだ。これ迄にも何度か三国志ブームは起きているが、最近もその兆候が見られるとか。
三国志には幾つかの見せ場が存しているが、その中でも最大の山場は赤壁の戦いではないか。「後の魏王・曹操孟徳率いる80万の軍」と、「後の呉帝・孫権仲謀と後の蜀帝・劉備玄徳の連合軍5万」が長江の赤壁で相見えた戦い。何しろ白髪三千丈的表現が好きな彼の国なので「80万v.s.5万」という数字は怪しくも在るが(「曹操軍:15万~24万、孫権&劉備連合軍:2万~5万」という説も。)、兎にも角にも曹操軍の規模が連合軍を圧倒していたのは間違い無いだろう。数の上で圧勝していた曹操軍が、結果としては連合軍に敗れ去ってしまったこの戦い。「曹操軍は数こそ多いが、敗残兵の寄せ集め。結束の固さでは遥かに連合軍に劣っていた。」や「水上の戦を連合軍(厳密に言えば孫権軍。)は得意としていた。」等、曹操軍が負けに到った理由は色々在ろうが、連合軍の戦略が勝っていたというのも大きい。孫権軍の周瑜公瑾、そして劉備軍の諸葛亮孔明という智謀に優れた2人が連合軍に奇跡の勝利を齎した言っても良いだろう。“天下分け目の戦い”として、我が国では関ヶ原の戦いが取り上げられる。赤壁の戦いで勝利した連合軍の将、即ち後の呉帝&蜀帝は共に天下統一を図れなかった訳で、その意味で言うと赤壁の戦いを天下分け目の戦いとは呼べないだろうが、中国に於ける歴史的な大決戦で在ったのは確かだ。
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西暦208年。大軍を率い、天下を手中に収めんと欲する曹操(チャン・フォンイー氏)にとって、目の上のたん瘤は劉備(ヨウ・ヨン氏)と孫権(チャン・チェン氏)だった。曹操軍に追われる劉備軍は孫権軍と同盟を結ぶ為、軍師の孔明(金城武氏)を孫権の元に遣わす。しかし孫権軍では曹操に脅威を感じているものの、強大な力を有する相手と戦う事に否定的な家臣が多く、同盟工作は難航を予感させた。
そんな中、孔明は赤壁で孫権軍の司令官・周瑜(トニー・レオン氏)と出会う。武将として優秀なだけでは無く、音楽の才能にも溢れている周瑜。この若きカリスマに孔明は魅了され、一方の周瑜も孔明の人柄と戦術眼に驚嘆。信頼を深めていった彼等は、共に戦う事を決意するのだった。
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赤壁の戦いから、今年で丁度1,800年。ジョン・ウー監督の「レッドクリフ PartⅠ」は、この戦いを描いた作品だ。「独特な映像美」と「暴力的且つ華麗なアクション・シーン」で熱狂的なファンを持つ彼だが、この作品もそんなテーストに満ちている。映像を見ただけで、「これはジョン・ウー監督の作品だな。」と判る人も少なくないだろう。特に素晴らしいのは戦闘シーン。印象に残る戦闘シーンは過去の名作にも少なくないが、陣形及びそれを用いてどう戦ったかをヴィジュアルとして此処迄きちんと描いたのは無かった様に思う。
「亀甲の陣(九官八掛の陣)」や「鶴翼の陣」等が具体的に取り上げられているが、孔明が亀の甲羅を見て思い付いたとされる亀甲の陣には圧倒された。身の丈程も在る大きな楯を持った数多の兵士達が巨大な丸い陣形を作り、その中に小さな亀甲の陣形が同様の兵士達で集合体として構成されている。策を弄されて巨大な陣形の中へと入り込んでしまった曹操軍が、じわじわと“人間の壁”によって周りを狭められて行くシーンは圧巻。どういった陣形かを知識として知ってはいたが、実際に映像として見ると感動。このシーンを見るだけでも、この作品は価値が在る。
武将達の戦い振りも、実に個性的。“破壊王”こと橋本真也氏を思わせる張飛翼(ザン・ジンシェン氏)。曹操軍を包囲した盾がパッと開き、颯爽と登場する関羽雲長は、大見得を切った歌舞伎役者の姿そのものだ。趙雲子竜(フー・ジュン氏)は、ジャッキー・チェンを思わせるカンフー・アクション。甘興(中村獅童氏)には侍の香りが、そして周瑜には「カンフー+侍」といった優雅さを感じた。
絶世の美女と称された小喬。周瑜の妻でも在る彼女を演じているのはリン・チーリンさんだが、これがまあ美しい。曹操が彼女を狙っていたという話も頷ける。気の強い孫尚香役を演じていたヴィッキー・チャオさんもなかなかの存在感。自分の中での孔明像とはやや異なっていたが、金城武氏も悪くは無かった。
5時間を超える長編となってしまった為、PartⅠ&Ⅱの2部構成になったというレッドクリフ。PartⅡが日本で公開されるのは、来年の4月との事。余り必要性を感じないシーンも在り、もう少しスッキリ纏めても良かった様には思うが、上記の如く戦闘シーンは凄い!総合評価は星4つ。
三国志には幾つかの見せ場が存しているが、その中でも最大の山場は赤壁の戦いではないか。「後の魏王・曹操孟徳率いる80万の軍」と、「後の呉帝・孫権仲謀と後の蜀帝・劉備玄徳の連合軍5万」が長江の赤壁で相見えた戦い。何しろ白髪三千丈的表現が好きな彼の国なので「80万v.s.5万」という数字は怪しくも在るが(「曹操軍:15万~24万、孫権&劉備連合軍:2万~5万」という説も。)、兎にも角にも曹操軍の規模が連合軍を圧倒していたのは間違い無いだろう。数の上で圧勝していた曹操軍が、結果としては連合軍に敗れ去ってしまったこの戦い。「曹操軍は数こそ多いが、敗残兵の寄せ集め。結束の固さでは遥かに連合軍に劣っていた。」や「水上の戦を連合軍(厳密に言えば孫権軍。)は得意としていた。」等、曹操軍が負けに到った理由は色々在ろうが、連合軍の戦略が勝っていたというのも大きい。孫権軍の周瑜公瑾、そして劉備軍の諸葛亮孔明という智謀に優れた2人が連合軍に奇跡の勝利を齎した言っても良いだろう。“天下分け目の戦い”として、我が国では関ヶ原の戦いが取り上げられる。赤壁の戦いで勝利した連合軍の将、即ち後の呉帝&蜀帝は共に天下統一を図れなかった訳で、その意味で言うと赤壁の戦いを天下分け目の戦いとは呼べないだろうが、中国に於ける歴史的な大決戦で在ったのは確かだ。
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西暦208年。大軍を率い、天下を手中に収めんと欲する曹操(チャン・フォンイー氏)にとって、目の上のたん瘤は劉備(ヨウ・ヨン氏)と孫権(チャン・チェン氏)だった。曹操軍に追われる劉備軍は孫権軍と同盟を結ぶ為、軍師の孔明(金城武氏)を孫権の元に遣わす。しかし孫権軍では曹操に脅威を感じているものの、強大な力を有する相手と戦う事に否定的な家臣が多く、同盟工作は難航を予感させた。
そんな中、孔明は赤壁で孫権軍の司令官・周瑜(トニー・レオン氏)と出会う。武将として優秀なだけでは無く、音楽の才能にも溢れている周瑜。この若きカリスマに孔明は魅了され、一方の周瑜も孔明の人柄と戦術眼に驚嘆。信頼を深めていった彼等は、共に戦う事を決意するのだった。
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赤壁の戦いから、今年で丁度1,800年。ジョン・ウー監督の「レッドクリフ PartⅠ」は、この戦いを描いた作品だ。「独特な映像美」と「暴力的且つ華麗なアクション・シーン」で熱狂的なファンを持つ彼だが、この作品もそんなテーストに満ちている。映像を見ただけで、「これはジョン・ウー監督の作品だな。」と判る人も少なくないだろう。特に素晴らしいのは戦闘シーン。印象に残る戦闘シーンは過去の名作にも少なくないが、陣形及びそれを用いてどう戦ったかをヴィジュアルとして此処迄きちんと描いたのは無かった様に思う。
「亀甲の陣(九官八掛の陣)」や「鶴翼の陣」等が具体的に取り上げられているが、孔明が亀の甲羅を見て思い付いたとされる亀甲の陣には圧倒された。身の丈程も在る大きな楯を持った数多の兵士達が巨大な丸い陣形を作り、その中に小さな亀甲の陣形が同様の兵士達で集合体として構成されている。策を弄されて巨大な陣形の中へと入り込んでしまった曹操軍が、じわじわと“人間の壁”によって周りを狭められて行くシーンは圧巻。どういった陣形かを知識として知ってはいたが、実際に映像として見ると感動。このシーンを見るだけでも、この作品は価値が在る。
武将達の戦い振りも、実に個性的。“破壊王”こと橋本真也氏を思わせる張飛翼(ザン・ジンシェン氏)。曹操軍を包囲した盾がパッと開き、颯爽と登場する関羽雲長は、大見得を切った歌舞伎役者の姿そのものだ。趙雲子竜(フー・ジュン氏)は、ジャッキー・チェンを思わせるカンフー・アクション。甘興(中村獅童氏)には侍の香りが、そして周瑜には「カンフー+侍」といった優雅さを感じた。
絶世の美女と称された小喬。周瑜の妻でも在る彼女を演じているのはリン・チーリンさんだが、これがまあ美しい。曹操が彼女を狙っていたという話も頷ける。気の強い孫尚香役を演じていたヴィッキー・チャオさんもなかなかの存在感。自分の中での孔明像とはやや異なっていたが、金城武氏も悪くは無かった。
5時間を超える長編となってしまった為、PartⅠ&Ⅱの2部構成になったというレッドクリフ。PartⅡが日本で公開されるのは、来年の4月との事。余り必要性を感じないシーンも在り、もう少しスッキリ纏めても良かった様には思うが、上記の如く戦闘シーンは凄い!総合評価は星4つ。
安心しました。
私は三国志には疎いので、今後の展開を知らぬままpart 2に臨もうと思ってます。
どう描いてくれるのか楽しみです。
トラックバックありがとうございました。(*^-^*
亀甲の陣は圧巻でしたね。
おしとやかな小喬と活発な尚香は対照的なキャラクターの女性でしたね。
コー○ーの戦略ゲーを少しはかじった私からすれば、この映画はなかったですね。
同社が出している、「三国無双」等のゲームが好きな方でしたら、楽しめるかもしれませんが、戦略・戦術性のなさといえば、、、(汗)。
また、張飛や関羽等が得物(武器)を捨てるのには納得できなかったですし、周瑜といったら、、、(劇汗)。
(戦前で○○○してるし、負傷したのも、匹夫の勇としかいえないのですが)
私は、三国志は、ゲームだけでなく、小説や、当時の武器等の書物も読んでみましたが、この映画は、残念でならないのですが、、、。
(私は、三国志以前の史記も好きで、書き下し文やマンガ等も読んでみた事があります)
あれでは曹操がコスプレマニアみたいです。
赤壁の戦い。実はフィクションではないかという説もあります。あれだけの大敗にもかかわらず魏の国力は落ちてないし名のある武将の戦死もありません。
三国志が好きな人はいても清朝や明朝に詳しい人は日本にはあまりいません。そのあたりが
今の中国への誤解の源ではないかという気がします。
1ヶ月ほど前、運転しながら地元のラジオを聞いていたら、地元の人気男性アナ(30代後半)がこの映画の感想を語っていて、そこで、
「中国の武将を日本人の役者が演じるのって、アリなのかな?」
と語っていたのが、ちょっと引っ掛かりました。彼によると、
「日本の戦国時代を舞台にした時代劇に、ジャッキー・チェンが出るようなものじゃないのかな。まあ、それもどんなものか見てみたいけど。」
それを聞いて、ヨン様が上杉謙信や沖田総司を演じる姿を頭に浮かべてみました。
ちなみに、途中で車を降りたので、リスナーのリアクションはあまり聞けませんでした。
「金城さんは、お母さんが台湾出身だからいいんじゃないですか。」
というメールは紹介されていましたが。
皆さんはどう思われますか?
三国志が好きな方でも、その賛否は分かれるのかもしれませんね。Mars様が上で指摘されておられる様に「戦略&戦術の無さ」という点も、否定的な部分では在りましょう。唯、この作品はあくまでもPartⅠという事で、ぱrtⅡを観てみないと、その全体像が判らないのも事実。PartⅡでは戦略&戦術面に重きを置いて、描いているかもしれませんし。
何しろ1,800年も前の出来事ですから、その実像が大分異なって伝わっている可能性も在り得ますね。唯、三国志の一ファンとしては、「この戦いがフィクションだった。」というのは寂しいし、規模は異なれども現実で在ったと信じたいです。
昔のハリウッド映画では「日本人」が登場すると、どう考えても日本人では無い役者(中国人等)が演じていて、尚且つ日本人なら普通はしない様な行動をしたりする物ですから、違和感がかなり在ったのは事実。
唯、日本人の役を海外の役者が演じたり、その逆というケースに関して言えば、個人的には「演技力がきちんと在り、そしてシニカルな意味でわざと遣るのは別にして、その人種が明らかに遣らない様な行動をしたりするので無ければ、別に構わないと思っています。演技力の全くない日本人役者が演じる侍よりも、演技力の高い外国人が演じる侍の方が、最初は違和感を覚えても、次第に作品の中に没頭して行けそうな気がしますし。
金城氏のファンには怒られちゃうだろうけれど、日本で出演したTVドラマは今一つパッとしなかった物ばかりというイメージが在ります。その最たる例が「ゴールデンボウル」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%83%AB)ですが(笑)、深田恭子さんと出ていた「神様、もう少しだけ」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E6%A7%98%E3%80%81%E3%82%82%E3%81%86%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%A0%E3%81%91)で、「やけにエッチなキスをする役者だなあ。」という印象が残っています。
最初に彼を見たのは映画「恋する惑星」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%8B%E3%81%99%E3%82%8B%E6%83%91%E6%98%9F)でしたが、「目の綺麗な役者だなあ。」と思いました。彼主演の「K-20 怪人二十面相・伝」が面白そうなので、公開されたら観に行こうかと。
なるほど、一理ありますね。
日本の時代劇に外国人が出演した例といえば、若い頃のジュディ・オングさんが必殺シリーズや「おしどり右京捕物車」等に出演していたケースがありました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B0
韓流スターが日本の侍や武将を演じる、というのは、まあ、まかり間違っても豊臣秀吉を演じる人はいないでしょうけど、それこそ、かつての「オールスターかくし芸大会」なら、実現させていたのではないかなとも思います。