ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「密室蒐集家」

2013年05月01日 | 書籍関連

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目撃された殺人と消えた犯人、そして目の前を落下する女、鍵を飲み込んだ被害者に雪の足跡・・・。警察内部で「『密室殺人』が起きると、何処からとも無く現れ、謎を難無く解決しては、何時の間にか消え去る男。」と言われている“密室蒐集家”が、1937年から2001年に掛けて発生した5つの“密室殺人”の謎を解き明かす。

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毎年、注目している「ミステリーブック・ランキング」が3つ在る。「本格ミステリ・ベスト10」(発行元:原書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(発行元:文藝春秋)、そして「このミステリーがすごい!」(発行元:宝島社)がそうだ。)。「週刊文春ミステリーベスト10」と「このミステリーがすごい!」は概して大衆受けする作品”が多く選ばれている一方で、「本格派推理小説」を対象としている「本格ミステリ・ベスト10」の場合は“マニアックな作品”の選出が珍しく無い。「本格ミステリ・ベスト10」では上位に選ばれているのに、「週刊文春ミステリーベスト10」や「このミステリーがすごい!」ではベスト10内に入ってもいないという作品も、例年結構在る。

 

冒頭梗概を記した「密室蒐集家」(著者:大山誠一郎氏)も、そんな小説の1つ。「2013本格ミステリ・ベスト10【国内編】」で2位に選ばれるも、「2012週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」及び「このミステリーがすごい!2013年版【国内編】」ではベスト10に入っていない。

 

“密室蒐集家”なる人物は、時空超越した存在。1937年を舞台にした「柳の園」でも、2001年を舞台にした「佳也子の屋根に雪ふりつむ」でも、密室蒐集家の「30歳前後」という見た目は、全く変わっていない。

 

そして、密室蒐集家のもう1つの特徴は、安楽椅子探偵で在るという事。「現場を徹底的に調査し、関係者から証言等を得た上で、謎を解き明かす。」のが普通の探偵だが、密室蒐集家の場合は「現場を見る事無く、関係者から話を聞いただけで謎を解き明かす。」というスタンスで、其れも1人乃至は数人にちょこっとだけ話を聞いて、“瞬時に”謎を解き明かすという無駄の無さ。「謎を解き明かす要した時間」という点では、数多の名探偵の中でもナンバー1かもしれない。(「33分探偵」よりも凄いだろう。)

 

「『密室殺人』なんて、現実には存在しない。」と言う。『密室』と思われているけれど、実際には『人の思い込みや勘違い』が、『密室』と思わせている。からだ。今回登場する5つの“密室殺人”も、は「人の思い込みや勘違い」が「密室で起こった殺人」と思い込ませてしまっている訳だが、其の思い込みや勘違いが明らかとなった時、「成る程。」という驚きは確かに在る。

 

良くも悪くも「ミステリー」という横文字よりも、「探偵小説」という表現が似合う作品。無駄を極限削ぎ落とした、実にシンプルな内容で在り、こういうテーストは人によって好き好きがハッキリ分かれるだろう。

 

面白い事は面白いけれど、深みは感じない。総合評価は、星3つとする。


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-05-03 21:18:22
密室と言えば、横山秀夫の「密室の人」では、裁判官が公判中に居眠りをすることが、時々、普通にあるように書かれていました。 裁判官も人間ですから、お昼御飯を食べて、午後からの裁判で居眠りをしてしまうことがあるのでしょうか。 書記官から記録をもらって居眠りで聞き逃した部分を後で確認して、次の公判に差し支えないかどうか、前後の記憶とつなぎ合わせて、事なきを得るのですが、この小説の中では、あろうことか、大きな声で法廷内で愛する妻の名前を叫んで居眠りから目覚めます。 殺人事件の公判の真っ最中にです。 法廷という密室で起きた不祥事は、実は、仕組まれたものでした。 密室ミステリーにもいろいろありますが、謎を解き明かさなくては密室から出られないようなストーリーは苦手です。
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>マヌケ様 (giants-55)
2013-05-03 21:30:08
書き込み有難う御座いました。

横山秀夫氏の作品、刊行されているのは全て読破している積りでしたが、「密室の人」という作品は其のタイトルも、又、マヌケ様が記して下さった梗概も記憶が在りませんでした。面白そうなので、今度捜して読んでみたいと思います。

裁判中に裁判官だか検事だか、将又弁護士だかが実際にウトウトとしてしまって、其れが問題になった事って、実際に在りませんでしたっけ?許される事では無いのだけれど、「こういう人達も、普通の人間なんだなあ。」と、当たり前の事を再認識させられる話です。
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