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目撃された殺人と消えた犯人、そして目の前を落下する女、鍵を飲み込んだ被害者に雪の足跡・・・。警察内部で「『密室殺人』が起きると、何処からとも無く現れ、謎を難無く解決しては、何時の間にか消え去る男。」と言われている“密室蒐集家”が、1937年から2001年に掛けて発生した5つの“密室殺人”の謎を解き明かす。
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毎年、注目している「ミステリーのブック・ランキング」が3つ在る。「本格ミステリ・ベスト10」(発行元:原書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(発行元:文藝春秋)、そして「このミステリーがすごい!」(発行元:宝島社)がそうだ。)。「週刊文春ミステリーベスト10」と「このミステリーがすごい!」は概して“大衆受けする作品”が多く選ばれている一方で、「本格派推理小説」を対象としている「本格ミステリ・ベスト10」の場合は“マニアックな作品”の選出が珍しく無い。「本格ミステリ・ベスト10」では上位に選ばれているのに、「週刊文春ミステリーベスト10」や「このミステリーがすごい!」ではベスト10内に入ってもいないという作品も、例年結構在る。
冒頭で梗概を記した「密室蒐集家」(著者:大山誠一郎氏)も、そんな小説の1つ。「2013本格ミステリ・ベスト10【国内編】」で2位に選ばれるも、「2012週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」及び「このミステリーがすごい!2013年版【国内編】」ではベスト10に入っていない。
“密室蒐集家”なる人物は、時空を超越した存在。1937年を舞台にした「柳の園」でも、2001年を舞台にした「佳也子の屋根に雪ふりつむ」でも、密室蒐集家の「30歳前後」という見た目は、全く変わっていない。
そして、密室蒐集家のもう1つの特徴は、“安楽椅子探偵”で在るという事。「現場を徹底的に調査し、関係者から証言等を得た上で、謎を解き明かす。」のが普通の探偵だが、密室蒐集家の場合は「現場を見る事無く、関係者から話を聞いただけで謎を解き明かす。」というスタンスで、其れも1人乃至は数人にちょこっとだけ話を聞いて、“瞬時に”謎を解き明かすという無駄の無さ。「謎を解き明かす迄に要した時間」という点では、数多の名探偵の中でもナンバー1かもしれない。(「33分探偵」よりも凄いだろう。)
「『密室殺人』なんて、現実には存在しない。」と言う。「『密室』と思われているけれど、実際には『人の思い込みや勘違い』が、『密室』と思わせている。」からだ。今回登場する5つの“密室殺人”も、要は「人の思い込みや勘違い」が「密室で起こった殺人」と思い込ませてしまっている訳だが、其の思い込みや勘違いが明らかとなった時、「成る程。」という驚きは確かに在る。
良くも悪くも「ミステリー」という横文字よりも、「探偵小説」という表現が似合う作品。無駄を極限迄削ぎ落とした、実にシンプルな内容で在り、こういうテーストは人によって好き好きがハッキリ分かれるだろう。
面白い事は面白いけれど、深みは感じない。総合評価は、星3つとする。
横山秀夫氏の作品、刊行されているのは全て読破している積りでしたが、「密室の人」という作品は其のタイトルも、又、マヌケ様が記して下さった梗概も記憶が在りませんでした。面白そうなので、今度捜して読んでみたいと思います。
裁判中に裁判官だか検事だか、将又弁護士だかが実際にウトウトとしてしまって、其れが問題になった事って、実際に在りませんでしたっけ?許される事では無いのだけれど、「こういう人達も、普通の人間なんだなあ。」と、当たり前の事を再認識させられる話です。