ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「沈黙のパレード」

2019年01月05日 | 書籍関連

昨年からBS12では、ドラマ時間ですよ」(第2シリーズ~第3シリーズ)が再放送されている。銭湯を舞台にしたホームドラマで、下町人情を描いている。本放送されたのは第2シリーズが1971年7月21日~1972年3月15日、第3シリーズは1973年2月14日~年9月5日で、自分が此れ等のシリーズを見るのは初めて。

 

46年以上も前の作品なので森光子さん、船越英二氏、松山英太郎氏、樹木希林(当時の芸名は「悠木千帆」)さん、三代目・江戸家猫八氏、左とん平氏、正司玲児氏、かまやつひろし氏、下川辰平氏、はしだのりひこ氏、小坂一也氏、鈴木ヒロミツ(当時の芸名は「鈴木博三」)氏、池部良氏、菅井きんさん、林隆三氏、松崎真氏、大原麗子さん、藤村有弘氏、太宰久雄氏、由利徹氏、豊島泰三氏、武智豊子さん、森繁久彌氏、松村達雄氏、三崎千恵子さん等、鬼籍に入られた人も少なく無い。

 

で、前置きが長くなってしまったが、第3シリーズでは銭湯「松の湯」を営む松野祥造(船越英二氏)&まつ(森光子さん)夫婦のに、御手伝いさんとして相馬ミヨコ(浅田美代子さん)が遣って来る。両親を亡くしたミヨコを、松野夫婦は家族の様に可愛がるのだが、或る回では「ミヨコから優しくして貰った祥造が非常に感激して、彼女を実の娘の様に面倒を見る。」という場面が登場する。息子しかない祥造にとって、娘の様に接してくれたミヨコが愛おしくてならず、高価な服を買って上げたりするのだ。本当の親子の様に接していたのだが、番組の最後になって唐突に、祥造はミヨコから「旦那さん、気持ち悪いです。」と言われてしまう。良かれと思って娘の様に接していた事が、ミヨコにとっては「本当の父親では無いのに。」という重荷になっていたのだろう。呆然と立ち尽くす祥造の姿を見て、「ミヨコの気持ちも判らないでは無いけれど、『旦那さん、気持ち悪いです。』という言葉は無いよなあ。此れじゃあ、祥造が気の毒。」と思ったもの。

 

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突然行方不明になった町の人気娘・並木佐織(なみき さおり)が、数年後に遺体となって発見された。容疑者・蓮沼寛一(はすぬま かんいち)は、警視庁捜査1課係長
草薙俊平(くさなぎ しゅんぺい)嘗て担当した「少女殺害事件」で無罪となった男。

 

だが、今回も証拠不充分釈放されてしまう。更に其の男が堂々と遺族達の前に現れた事で、町全体を「憎悪義憤」の空気が覆う

 

嘗て、佐織が町中を熱狂させた秋祭り「キクノ・ストリート・パレード」の季節が遣って来た。パレード当日、復讐劇は如何にして遂げられたか?殺害方法は?アリバイトリックは?

 

超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川学(ゆかわ まなぶ)に助けを求める。

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天才的な頭脳を有する帝都大学物理学教授の湯川学は、帝都大学では同期生で、同じバドミントン部にも所属していた草薙に協力し、過去に多くの難事件を解決して来た。

 

今回読んだ「沈黙のパレード」(著者東野圭吾氏)は「ガリレオ・シリーズ」の第9弾に当たり、前作の第8弾「禁断の魔術 ガリレオ8」から6年振り上梓となる。「2019本格ミステリ・ベスト10【国内編】」では10位「このミステリーがすごい!2019年版【国内編】」では4位、そして「2018週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では1位に選ばれた作品だ。

 

冷静沈着”という言葉を具現化した様な湯川が、「禁断の魔術 ガリレオ8」では意外な“顔”を見せ、そして旅立って行く。アメリカで過ごし、帰した彼は、今回の作品で益々人間臭さを見せている。変わり者という面は変わらないが、“過去の悲しみ”を“今”に生かしているのは、“人間としての幅”が広がったという事なのだろう。

 

殺害トリックに付いては、早い段階で見当が付いた。又、“偶然に思えた或る人物の登場”も、「偶然では無いな。」という予想は付いた。でも、“真犯人”に関しては、完全に外してしまった。「最も真犯人では無さそうな人物が、実は真犯人。」というのがミステリー常識だが、そういう観点から推理しても、真犯人は意外な人物だったから。

 

「真犯人当てを外してしまった。」という意味では“遣られた感”が在って満足な内容だが、殺害された或る人物に関しては、非常にモヤモヤとした思いが残った。使者に鞭打つ事になってしまうが、真犯人に向かって言い放った「気持ち悪い。」という言葉は、冒頭で紹介した”ミヨコの祥造に対する余りな言葉”と重なってしまったから。

 

面白い作品では在るが、東野圭吾氏の実力からすると、物足りなさを感じてしまう。個人的には、もっと深みが欲しかった。総合評価は、星3.5個とする。


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