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酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴等を乗せた新幹線は、北を目指し疾走する!
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伊坂幸太郎氏の小説「マリアビートル」には、多くの殺し屋(元殺し屋も含め。)が登場する。6年前に同氏は「グラスホッパー」(自分は未読。)なる小説を刊行しているが、其れに続く「殺し屋達の狂想曲シリーズ」という位置付けらしい。
ユーモラスなタッチで描かれているが、新幹線内で起こる出来事自体は実に陰惨。又、「王子」なる中学生は「人間の持つ邪悪さを煎じ詰めた様な存在」で、小説とは判っていても彼の言動には唾棄したくなる程の嫌悪感を持ってしまう。「良くぞ此処迄、不快極まり無い人間像を描けたなあ。」と感心してしまったりもするが、ストーリーを追う過程で「こんな邪悪な人間を、殺し屋達が消してくれないものか。」と感じている自分にふと気付き、「そういう思いを自然と持ってしまう自分も、同様に邪悪さを持っているのだなあ。」と感じた次第。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_6.gif)
「過去」に関して曖昧な記述が為されていた人物に関し、意外な正体が最後に明らかとされる。此の点は中々面白かったが、読後に爽快さを覚える類いの作風では無い。
特に印象に残った記述は、以下の3つ。
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・ ルワンダの、ある専門学校における虐殺についてのくだりを読んだ際には、なるほどこれは面白いと王子は身震いを覚えた。
その専門学校には、国連軍が駐留しており、彼らが守ってくれる、という噂があった。国連だから、虐殺から守ってくれる。そう思ったツチ族二千人が、そこに逃げ込んだ。ただ残念ながらその時には、国連軍の任務は」、「ツチ族を救うこと」ではなく、「ルワンダにいる『外国人』を避難させること」に変更されていた。間接的に国連軍の兵士は、「ルワンダ人を救わなくて良い。」と指示されていたことになる。
国連軍の兵士たちはほっとした。関わらなくて済むからだ。ツチ族を守ろうとしたら、自分たちのほうが恐ろしい目に遭う可能性が高かった。実際、国連軍の兵士は、「自分たちの任務じゃないから。」と、フツ族が包囲している中、その学校を後にした。
直後、残されたツチ族二千人は虐殺された。
平和を維持するはずの国連軍がいたがために、大量の被害者が生まれてしまったのだ。
・ 人間はおぞましい決断や倫理に反する判断をしなくてはならない時こそ、集団の見解に同調し、そして、「それが正しい。」と確信するのではないか、と。
・ 「ネットだってもちろんその一つだけど、それだけじゃないよ。お年寄りたちは極端なんだ。ネットを軽蔑してみたり、恐れてみたり。何かレッテルを貼って、安心しようとしている。それにいくらネットを使ったところで、重要なのは情報の扱い方なんだよ。『テレビや新聞は嘘ばっかり垂れ流す!それを鵜呑みにしている大人は馬鹿だ。』って叫んでいる人間も、もしかすると、『テレビや新聞は嘘ばっかり垂れ流す!』という情報を鵜呑みにしている馬鹿かもしれない。どの情報だって、ほんとと嘘が混ざっているに決まってるのに、どちらかが正しい、と断定するのはまったくなってない。」
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総合評価は星3つ。
酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴等を乗せた新幹線は、北を目指し疾走する!
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伊坂幸太郎氏の小説「マリアビートル」には、多くの殺し屋(元殺し屋も含め。)が登場する。6年前に同氏は「グラスホッパー」(自分は未読。)なる小説を刊行しているが、其れに続く「殺し屋達の狂想曲シリーズ」という位置付けらしい。
ユーモラスなタッチで描かれているが、新幹線内で起こる出来事自体は実に陰惨。又、「王子」なる中学生は「人間の持つ邪悪さを煎じ詰めた様な存在」で、小説とは判っていても彼の言動には唾棄したくなる程の嫌悪感を持ってしまう。「良くぞ此処迄、不快極まり無い人間像を描けたなあ。」と感心してしまったりもするが、ストーリーを追う過程で「こんな邪悪な人間を、殺し屋達が消してくれないものか。」と感じている自分にふと気付き、「そういう思いを自然と持ってしまう自分も、同様に邪悪さを持っているのだなあ。」と感じた次第。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_6.gif)
「過去」に関して曖昧な記述が為されていた人物に関し、意外な正体が最後に明らかとされる。此の点は中々面白かったが、読後に爽快さを覚える類いの作風では無い。
特に印象に残った記述は、以下の3つ。
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・ ルワンダの、ある専門学校における虐殺についてのくだりを読んだ際には、なるほどこれは面白いと王子は身震いを覚えた。
その専門学校には、国連軍が駐留しており、彼らが守ってくれる、という噂があった。国連だから、虐殺から守ってくれる。そう思ったツチ族二千人が、そこに逃げ込んだ。ただ残念ながらその時には、国連軍の任務は」、「ツチ族を救うこと」ではなく、「ルワンダにいる『外国人』を避難させること」に変更されていた。間接的に国連軍の兵士は、「ルワンダ人を救わなくて良い。」と指示されていたことになる。
国連軍の兵士たちはほっとした。関わらなくて済むからだ。ツチ族を守ろうとしたら、自分たちのほうが恐ろしい目に遭う可能性が高かった。実際、国連軍の兵士は、「自分たちの任務じゃないから。」と、フツ族が包囲している中、その学校を後にした。
直後、残されたツチ族二千人は虐殺された。
平和を維持するはずの国連軍がいたがために、大量の被害者が生まれてしまったのだ。
・ 人間はおぞましい決断や倫理に反する判断をしなくてはならない時こそ、集団の見解に同調し、そして、「それが正しい。」と確信するのではないか、と。
・ 「ネットだってもちろんその一つだけど、それだけじゃないよ。お年寄りたちは極端なんだ。ネットを軽蔑してみたり、恐れてみたり。何かレッテルを貼って、安心しようとしている。それにいくらネットを使ったところで、重要なのは情報の扱い方なんだよ。『テレビや新聞は嘘ばっかり垂れ流す!それを鵜呑みにしている大人は馬鹿だ。』って叫んでいる人間も、もしかすると、『テレビや新聞は嘘ばっかり垂れ流す!』という情報を鵜呑みにしている馬鹿かもしれない。どの情報だって、ほんとと嘘が混ざっているに決まってるのに、どちらかが正しい、と断定するのはまったくなってない。」
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総合評価は星3つ。
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