*********************************
「忘れた記憶を薬で回復 東大等世界初、認知症治療目指す」(1月8日、産経新聞)
「忘れてしまった記憶を、薬で回復させる実験に成功した。」と、東京大や北海道大等の研究チームが発表した。
記憶を回復させる効果が在る薬の発見は、世界初と言う。アルツハイマー病等の認知症の治療に、役立つ可能性が在る。米科学誌電子版に8日、論文が掲載された。
チームは「20代を中心とした健康な男女計38人に、100枚程度の写真を見せ、約1週間後に覚えているかを調べる実験。」を実施。眩暈の治療薬として使われている「メリスロン」を飲んだ場合と、飲まなかった場合で正解率を比較した。
其の結果、薬を飲むと、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率は最大で2倍近く上昇する事が判明。忘れた写真が多かった人程効果が在り、見たかどうか判別が難しい写真で正解率が、より高まる傾向が在る事も判った。
此の薬は脳内の情報伝達に関わる「ヒスタミン」という物質の放出を促進する働きが在る。此の効果で、記憶を担う神経細胞が活性化し、忘れた記憶の回復に繋がったと見ている。
記憶が回復する仕組みを詳しく解明し、認知症の研究成果と組み合わせる事で、アルツハイマー病等の新たな治療法に繋がる可能性が在る。
チームの池谷裕二東大教授(薬理学)は「記憶回復のメカニズムが判ったので、今後はより効果の高い薬の開発に繋げたい。認知症患者等の生活の質を高められる可能性が在る。」と話している。
*********************************
「パソコン等の消えてしまったデータを、技術者が復元する。」というのが在るけれど、「パソコン等の消えてしまったデータ=人間の記憶、技術者=メリスロン、復元=記憶の回復」といった感じか。
過去に何度か書いた様に、「祖父が若くして認知症に罹患し、祖母達が介護で大変だった。」という過去が在るので、認知症という病を他人事には思えない。
気になって「メリスロン」なる薬を調べてみた所、「副作用の少ない、安全性の高い薬。」との事で、そういう意味ではホッとした。幾ら記憶の回復に繋がる可能性が高いとしても、副作用が多ければ問題外だから。
今回の研究結果により、認知症で苦しんでいる多くの人達が救われる事になれば嬉しいが、1つ気になる事が。元記事と同じ日に海外で発表されたのだが、「アルツハイマー病の発症メカニズムに付いて、“人種”によって違いが在るかも知れない事が明らかとなった。」と言うのだ。
今回の東大や北海道大等の研究チームが対象にした「20代を中心とした健康な男女計38人」というのは、恐らく全員日本人だろう。とすると、日本人の認知症患者にはメリスロンの効果が見られたけれど、他の人種の認知症患者には効果が見られるかどうか判らないという状況なのかも。
更なる研究結果が待たれる。