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詐欺師から足を洗い、口の上手さを武器に実演販売士として真っ当に生きる道を選んだ武沢竹夫(たけざわ たけお)。然し、謎めいた中学生・キョウが“とんでもない依頼”と共に現れた事で、彼の生活は一変する。シヴィアな現実に生きるキョウを目の当たりにした武沢は、再びペテンの世界に戻る事を決意。そして、嘗ての仲間で在るまひろ、やひろ、貫太郎等と再集結し、キョウを救う為に「超人気TV番組」を巻き込んだど派手な大仕掛けを計画するが・・・。
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道尾秀介氏の小説「カエルの小指 ~a murder of crows~」は、「街頭や店頭で巧みな口上を操り乍ら、人々の前で実際に商品を扱い、性能を説明し乍ら販売する人。」、即ち「実演販売士」を主人公に据えた作品。11年前に読んだ「カラスの親指 ~by rule of CROW’s thumb~」の続編、所謂「『カラスの親指』シリーズ」の第2弾となる。
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「相手の利き五感にトークを合わせるんだ。」。人間の五感は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の順に、情報量が百分の一ずつに減っていくと言われている。下の三つをひとまとめにして「身体感覚」とすると、上から「目」、「耳」、「身体」。この三つのどれを重視するかは人によって違い、「利き腕」や「利き足」と同じように「利き五感」と呼ばれる。「目」の人は視覚情報を、「耳」の人は聴覚情報を、「身体」の人は身体感覚を、無意識のうちに重視している。実演販売だけでなく、この利き五感への対応は、どんなコミュニケーションにも利用できる。異性でも同性でも、「目」の人にはジェスチャーなどの視覚情報が、「耳」の人には言葉や音が、「身体」の人には香りや美味しい食事が、相手との距離を縮める際に有効となる。
(中略)
もし相手の利き五感がわからないときは、何かを質問してみると、わかることがある。相手の目が上に動けば、その人の利き五感は「目」、横に動けば「耳」、こちらから見て左下に動けば「身体」だと言われている。
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我々が普段の生活を送る上で、参考になりそうな実演販売士のテクニックの数々は、非常に興味深かった。
又、動物の持つイメージから、其の“群れ”を表す英語が「烏の群れ=a murder of crows(無理無理に訳すと『烏達の殺人』。」、「ライオンの群れ=a pride of lions(無理無理に訳すと『ライオン達の誇り』。」、「麒麟の群れ=a tower of giraffes(無理無理に訳すと『麒麟達の塔』。)」と記されるというのも、初めて知った事だった。
「キャラクター設定に魅力が無い。」、「“思い込みによる理解が大きく裏切られた意外性”は在ったものの、ストーリー自体がぱっとしない。前作『カラスの親指 ~by rule of CROW’s thumb~」同様、何年か経ったらストーリーを思い出せない程、心に残る物が無い作品。」という感じで、総合評価は星3つとする。