本題に入る前に一言。
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「米 著作権益の拡大狙う ~TPPでミッキー守る!?~」(4月6日付け東京新聞【朝刊】)
ミッキーマウスの著作権収入を守る為?環太平洋連携協定(TPP)交渉では、農産物や工業製品だけで無く、知的財産権の保護も大きな焦点だ。交渉では、米国側が著作権保護期間の延長を主張し、権益拡大を狙って来る可能性が在る。
「くまのプーさんの著作権料は、世界で年間1千億円を超えている。もっと人気の在るミッキーマウスは更に多い。コンテンツと特許は、米国有数の“輸出産業”になっている。」。TPPと著作権に詳しい福井健策弁護士は、こう解説する。
米国の著作権法は皮肉交じりに、「ミッキーマウス保護法」、或いは「ミッキーマウス延命法」とも呼ばれる。ミッキーマウスの著作権が切れる直前、関係者のロビー活動によって保護期間を延長する法案が可決されて来た歴史が在るからだ。
TPP交渉では、知的財産権の分野で在る海賊版の取り締まりや、著作権の保護期間等も対象になりそうだと言う。米国の市民団体が昨年、独自に入手した交渉資料をインターネットで公開した。知的財産の分野では、著作権の保護期間を延長する様記されていた。
米国が世界各国から受け取る著作権・特許料の総額は、年間9兆6千億円にも上る。日本での著作権の保護期間は、作者の死後50年。米国は70年だ。著作物を利用する国の法律に基づいて支払われる。此の為、米国は、日本の保護期間を自国並みの70年に延長させたいと見られる。
世界の主要国では、保護期間は死後70年が多数派。日本音楽著作権協会(JASRAC)によると、経済協力開発機構(OECD)加盟34ヶ国の内、70年としているのは30ヶ国。メキシコが100年、50年と規定しているのは日本、カナダ、ニュージーランドの3ヶ国しか無い。
著作権料収入の増大が期待出来る為、同協会は保護期間延長を歓迎する立場。広報部は「70年は、世界の潮流。国際的な調和を推進する視点に立って考えるべきだ。」と主張する。
仮に70年に延長した場合、どんな影響が在るのか。間も無く没後50年を迎えて著作権が切れる人物の中には、江戸川乱歩や谷崎潤一郎等有名作家も少なく無い。ネット上等で、無料又は低価格で読む事は、適わなくなる。廉価版のDVDも見られなくなるかもしれない。
一方、日本の作家の作品で、海外から著作権料が得られる期間も長くなる様にも思えるが、福井弁護士は「名前位は知られていたとしても、作品が多く売れる人は少ない。海外で人気が高いアニメや漫画は新しい作品許り。日本のメリットは零に近い。」と話す。
日米間には、本来なら著作権が切れている戦前、戦中の米国の作品に著作権料を払い続けている「戦時加算」の問題も在る。戦勝国側が「日本は戦時中、無断で使用していた。」と見做し、保護期間を約10年加算した為だ。
優良なコンテンツを多く持つ米国が、圧倒的に優位なのが現状だ。福井弁護士は「何の国も輸入超過になっており、『米国対其れ以外の国』という構図になっている。そんな状況で、メリットも無いのに米国に従う必要は無い。」と話す。「交渉参加国の中で国内総生産(GDP)2位の日本が抜けて良いと思っている国は無いのだから、強気で交渉に臨むべきだ。」。
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TPP交渉に関して我が国では、賛否両論渦巻いている。「国民皆保険制度の崩壊」等、懸念される問題点も少なく無く、絶対に譲れない点は譲ってはいけないけれど、総合的に日本にとって利益が在るのならば、交渉に参加するのは在りだと思っている。
TPPに関して気に食わないのは、「己が利益を死守、乃至は拡大させれば良い。他国の利益なんぞは、知ったこっちゃ無い。」というアメリカの露骨な思惑が感じられる事。「自らの利益を追求したい。」というのは判らないでも無いけれど、「自分さえ良ければ良い。」というのでは駄目。「Win-Winの関係」というのは現実的に難しい事だけれど、そういう方向性を目指そうとしない交渉は、早晩に破綻を来す事だろう。
TPPに関しては、反対派からはデメリット許りが、そして賛成派からは逆にメリット許りが主張されている様な所が在り、今一つ“全体像”が見えません。
嘗て我が国では、高齢者の医療費(70歳以上)の自己負担が零だった時代が在ったそうですが、其れが今は少ないとは言え、負担する時代となった。少子高齢化が進む等、時代の変化に応じての事と言えますが、TPPが医療現場に及び、そして皆保険制度が崩壊したならば、「金の無い高齢者は死ね。」という事に成り兼ねない。世界との協調は勿論大事だけれど、だからと言って“良き文化”を捨て、“世界の潮流”とやらに迎合する必要なんぞは無い筈。目先の利益に捉われず、長期的に見て我が国の不利益になる事には、断固として受け容れないというスタンスを、日本政府には求めます。