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神奈川県警が劇場型捜査を展開した「バッドマン事件」から半年。巻島史彦(まきしま ふみひこ)警視は、誘拐事件の捜査を任された。和菓子メーカー「ミナト堂」の社長・水岡勝俊(みずおか かつとし)と息子・祐太(ゆうた)が拉致監禁され、後日、社長のみが解放される。社長と協力して捜査態勢を敷く巻島だったが、裏では犯人側の真の計画が進行していた。
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戦後、日本で発生した“身代金目的の誘拐事件”の内、未解決なのは8件だが、身代金奪取に成功したケースは全く無いのだとか。勿論、事件自体が表沙汰になっていないケース等も在るだろうから、成功例が在るかもしれないが、其れにしても誘拐事件は“割に合わない犯罪”と言える。
「そんな誘拐を巧妙な策で、ビジネスにし様と目論む男達。」を描いたのが、小説「犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼」(著者:雫井脩介氏)だ。此の作品は、2004年の「週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」で1位、2005年「このミステリーがすごい!【国内編】」で8位に選ばれた「犯人に告ぐ」の続編。
警察、犯人、被害者家族と、其れ其れが複雑な事情を抱え、互いに騙し合う。特に警察と犯人は知略を巡らし、犯行の遂行or防止に努めるのだが、結果的には“偶然”が、そんな知略に勝ってしまうのが何とも皮肉。
犯罪は、決して許される物では無い。でも、本人の意思とは無関係に、次々と悪い方向へと環境が変わって行き、そして悪事に手を染める事になった犯人というのには、同情する気持ちが在ったりもする。そんな犯人の屈折した心情が、行間から伝わって来る。
前半の引き込まれる様な展開からすると、後半は少々物足りなさが在る。でも、“真の犯人”と巻島との決着が付かなかった事から、次作を期待してしまう自分が居る。
総合評価は、星3.5個。