もう40年近く前になるが、夏の早朝に庭に出ると、木にしがみ付いて樹液を吸う甲虫や鍬形虫を見掛けた事が何度か在る。そんな姿を庭で見掛けなくなって、もう30年近くになる。
子供の頃から昆虫は苦手な自分だが、甲虫や鍬形虫のフォルムには魅了された。甲虫の大きな“角”や鍬形虫の大きな“顎”は、可成りのインパクトが。「鍬形虫の大きな顎や甲虫の大きな角は、どう“出来上がる”のだろう?」と、ずっと不思議に思っていたのだが・・・。
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「甲虫の角は エアバッグ方式 脱皮で一気に伸びる謎 解明」(11月22日付け東京新聞【夕刊】)
雄の甲虫の大きな角は、幼虫から蛹になる際に、小さく折り畳まれた袋状の組織を広げるだけで出来る事を、名古屋大大学院の後藤寛貴特任助教等のグループが突き止め、英科学誌電子版に発表した。
グループによると、雄の角は幼虫から蛹に脱皮する2時間弱の間に、一気に伸びる。幼虫の頭には、角の元になる「角原基(つのげんき)」と呼ばれる皺苦茶の袋状の組織が在る事が、此れ迄知られていたが、短時間で大きくなるメカニズムは判っていなかった。
実験では、袋状の組織に甲虫の体液を人為的に1分間で注入しても角は出来た事から、細胞の増殖による物という仮説は否定された。更に、角原基をホルマリンに漬けて細胞を正常に働かなくしても、角は形成された事から、細胞の変形等による物では無い事も確認出来た。
其処で、本物の角原基をスキャンしてコンピューター上にヴァーチャル角原基を作り、シミュレーションで広げてみた所、角原基の表面が伸び縮みしない様に設定しても、正常な角が出来る事が判明した。
こうした結果、角は細胞増殖等で成長するのでは無く、複雑に折り畳まれた状態から展開するという、単純な仕組みだった事が判った。広がる際は、角に体液が流れ込み、エアバッグが膨らむ様に、一気に形成されると言う。
鍬形の顎等、他の昆虫でも同じ事が起きていると予想される事から、後藤助教は「昆虫全般の脱皮を介した成長メカニズムの解明に繋がる。折り畳みの皺パターンを形成する遺伝子の仕組みも明らかにしたい。」と話す。
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「細胞増殖で、角が出来上がるのかなあ。」と想像していたので、「幼虫から蛹になる際、小さく折り畳まれた袋状の組織に体液が流入し、エアバッグが膨らむ様に、角が一気に形成される。」というのは意外だったが、そう言われてみれば「成る程。」と。